『乗りかかった船』

『乗りかかった船』
著者：瀧羽麻子（タキワ アサコ）
光文社

　人生航路の岐路、会社内の「人事」から始まる７つの新しい船出を描いた１冊です。
　多くの葛藤を描きながら、おかしくて、せつなくて、優しくて。
　読後感は表紙の青空のように爽やかです。

　舞台は中堅の造船会社。
　人事による大波小波によって心揺れるのは、新人から中堅、ベテランまで、男性も女性も、恋人たちも夫婦も……。
　もちろん、人事部の人たちも。

　選ばれることの喜びと、不満。
　自分は他人からどう評価されるのか。
　職場で必要とされているのか。
　部署間の対立や仕事の中の階級意識、男尊女卑。
　慣習を打ち破る難しさ。
　仕事のやりがいとは何か。
　「適材適所」は本当に実現できるのか。

　７人の人事を描きながら、同じ会社の中を、複数のカメラで映しているような、多面的な物語になっています。
　短編をまたいで登場する人物も複数いて、本当に一人の人間に対する評価が一つではないことに気付かされます。

　就職活動をしている学生さんにも、人事に不安や不満を感じている全ての働く人にも、そして働く家族を家で支えている人たちにも読んでほしい１冊です。