MOONIE'S TEA ROOM

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『うちへ帰れなくなったパパ』

2018年12月01日 | BOOKS
『うちへ帰れなくなったパパ』
ラグンヒルド・ニルスツン(Ragnhild Nilstun):作 
山内清子:訳
はたこうしろう:絵
徳間書店


 日本では1995年出版の児童書ですが、ノルウェーで出版されたのはなんと1989年。
 30年近く前に書かれた本ですが、驚くほど今の日本にぴったりの1冊です。

 原題は「Pappaen som ikke fant veien hjem」。「家への道を見つけられなかったパパ」という感じでしょうか。
 12月第1週の月曜日、仕事で忙しすぎるパパは、家族が引っ越した新居が分からず、家に帰れなくなります。
 次の日も、次の日も、なかなか家にたどりつけません。

 バスの中の男の子が言った「パパたちって、なんの役にたつの?」という言葉が、パパの心を大きく大きく揺さぶります。
「パパにしかできないことなんて、なにも思いつかない」と、頭の中はまっ白です。
 お金を稼ぐことも、車を運転することも、壁を塗ったり、壊れたものを直すのだって、ママだってできる……。
 パパはすっかり、家への道だけじゃなく、心の中の「理想のパパ」を見失ってしまいます。
(ノルウェーでは、すでに30年近く前から共働きが当たり前だったんですね!)

 「役に立つパパ」を探し求めるパパ。
 帰り道に探検家に出会い、あくる日はハングライダー乗りに、次の日はカーレーサーに、また翌日はカウボーイに出会います。
 男らしくて、強くて大きい、英雄や強者が、「役に立つパパ」なのか?
 小さい頃の自分の気持ちに立ち返ったとき、パパは「自分がなりたいパパ」に気がつきます。


 近年、女性は「男性と同じように稼ぐこと」だけでなく「今までの女性がしてきた家事の全て」も身につけるように、育てられてきました。
 しかし、男性はまだ旧時代の価値観で育てられることも多く、「男らしく」「強く」「女性にできないことをするのが男」という呪いをかけられてきたのかもしれません。

 「男性じゃなくちゃできないことができる、強くて偉いパパ」ではなくて、男女関係なく「家族を喜ばせることのできる一人の人間」であることの大切さ。
 これから父親になる男性に、男の子たちに、ぜひ読んでもらいたい1冊です。
  
 
 
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