前述したコガタスズメバチ(小形雀蜂、Vespa analis)の巣を除去しました。巣が巨大化しハイカーが襲われるのを防ぐためですが、除去には少し苦労しました。最初は、カラス除けの細いひもを巻いて遠くから引いて落とそうとしましたが失敗。フックの着いた長い棒で引っ張って落としました。簡単に落ちましたが女王蜂が立ち去らないため別の場所で草刈りをすることに。しばらくして戻ると巣は放棄されていました。巣は長さが15センチ、球形の直径が8センチ位ですが、厚さはまだ1ミリほど。柔らかく非常に華奢なものでした。まだ卵は産みつけておらず空でした。また同じところに営巣しないようにと周囲の草刈りをしました。今度はもっと人目のつかないところに作ってくれよと思いながら帰路につきました。やれやれです。
草刈りの最中に、林道脇にオカトラノオ(丘虎の尾:Lysimachia clethroides)の群生がありました。この花が咲きだすと梅雨は最盛期を迎え、夏も遠からじと思わせます。オカトラノオは、みな同じ方向を向いて咲きます。大きな群生地では、花穂(かすい)の波うつ様子がまるで丘の青海波(せいがいは)のように見えるほどです。虎の尾というように獣のしっぽに見えない事もありませんが、そんな勇猛な花名より、清純な恋という花言葉が似合う清楚で可憐な野草です。梅雨の里山でこの純白の花穂が一斉に揺れる様は、一時蒸し暑さを忘れさせてくれます。
このオカトラノオ、従来の分類体系(新エングラー体系)ではサクラソウ科なのですが、APG植物分類体系ではヤブコウジ科なんですね。どうにもあの赤い実を付ける低木のヤブコウジと同じ仲間とは思えず、人間は猿の仲間ではなくイボイノシシの仲間ですといわれたような気分で、なんとなく釈然としないのですが、DNAレベルでみるとそうなんですね。
青海波は、中国の内陸部の青海地方の民族文様を起源とするものです。海のないところなので、琵琶湖の6倍の広さがある塩水湖、青海湖がその波のモデルなのでしょうか。青海湖で画像検索すると、本当に美しい湖の写真がたくさん出てきます。永遠に続く波の様に平穏な日々が続きます様にという願いが込められた文様だそうです。
去年より出現が遅れていますが、まもなく信州の里山では、色々な蝶が舞い始めます。アサギマダラも里に下り始めてきました。北信濃の蝶は、MORI MORI KIDSの「ゼフィルスの饗宴」に特集してあります。たくさんの蝶が吸蜜に花々を舞い訪れる様は、まさに響宴というより饗宴です。捕虫網での捕獲と違い、蝶のマクロ撮影は忍耐の連続ですが、気配を殺して3センチまで接近撮影できたときの喜びは格別で、撮影後蝶に向かって思わずありがとうと言ってしまうほどです。保護のために撮影場所は書いてありませんが、みなが蒸し暑いし蜂やブユ、ヤブ蚊に蛇もいるのでと訪れない梅雨の里山では、こんな饗宴が毎日繰り広げられているのです。
★ネイチャーフォトは、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、地衣類、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、森の動物、特殊な技法で作るパノラマ写真など。
★夏の信州のトレッキングは、フォトドキュメントの手法で綴るトレッキング・フォトレポート【MORI MORI KIDS(低山トレッキング・フォトレポート)】をご覧ください。