梅雨の最盛期を迎える7月は、山も畑も草刈り・除草のシーズンです。今年の様に多雨が続くと、刈っても刈っても旺盛に生えてきて賽の河原の石積み状態。特にこの季節につる植物と帰化植物を繁茂させてしまうと、開花し結実してしまうので、いっそう大変なことになります。時間を見ては山に通う日々が続きます。汗でどろどろになるのは平気ですが、長袖を着ていても草のつゆでかぶれます。猫に草刈りができるなら、猫の手も借りたい毎日です。どこかに草刈正雄ではなく草刈玉とかいないですかね。
ブタクサ、アレチウリ、セイタカアワダチソウ、ヨウシュヤマゴボウ、カモガヤあたりが主な駆除すべき帰化植物ですが、実はこれ以外にも山ほどあります。さらに日本のものでもクズ、ヤマフジ、ミツバアケビなどは異常繁殖すると樹木を覆い尽くし立ち枯れさせるほか、イノシシやクマなどの野生動物の隠れ場所となり、里への被害を大きくする原因ともなるので適度に駆除しないといけません。近年首都圏でもこのクズが新興住宅地の斜面やフェンスに異常繁殖しているのがよく見られます。
これらの駆除は危険もともない本当に大変な作業ですが、一番はやはりハチでしょう。草むらの低い位置に営巣するムモンホソアシナガバチの被害が最も多いのですが、スズメバチの仲間が最も恐怖で、オオスズメバチとなると命の危険もあり、最も注意しなければならない相手です。これに比べればヤブ蚊や日向ぼっこしているヤマカガシなどはかわいいものです。マムシは要注意ですが・・・。
そんな草刈りをしている最中に、木の枝にゆっくりと動く大きな毛虫が目にとまりました。長い白い毛と水色のスポットがきれいなクスサンの幼虫です。ぐっさんではなくクスサンは、ヤママユガ科の大きな蛾です。仲間には天蚕の繭を作るヤママユガや、黄緑色のきれいな繭を作るウスタビガなどがいます。東京の街なかで見つけたオオミズアオも同じ仲間です。女子高生が「なーにこれえ!!」と指差していました。
このクスサンの幼虫は、楠の木の葉を食べるためクスサンと命名されたようですが、クリ、カキ、リンゴ、クヌギ、コナラ、イチョウ、ヌルデ、カエデなども食するようで、時に大発生して甚大な被害をもたらします。白く長い毛から白髪太郎、栗虫、栗毛虫などとも呼ばれます。この終齢幼虫は毒毛虫ではないので白い毛に触れても大丈夫です。昔はこの幼虫の5mもある長い腸をとりだして、釣りのテグス(天蚕糸)として使ったそうです。成虫ははねを広げると10センチ近くもありますが、口が退化してありません。そのため8-9月に出現するとなにも食べずに交尾出産するとすぐに死んでしまいます。
繭はよく山に落ちているのですが、編み目模様で透けていることから透かし俵と呼ばれます。さなぎはゆでて食べると美味しいらしいのですが、まだ食したことはありません。たぶん蚕のさなぎと同じような味だと思います。昆虫食は決して下手物料理ではありません。中国や韓国では蚕のさなぎが普通に食べられています。新大久保の韓国料理屋に行けばポンテギ(蚕のさなぎ煮)が食べられます。中華街の食材店でも売られています。日本でも信州は昆虫食のメッカです。観光地や道の駅などで瓶詰めや缶詰が売られています。世界中の人が昆虫食をすれば食料問題はなくなるという専門家もいます。本当に食料危機が来たら、昆虫色ができるかどうかが生死の分かれ目になるかもしれません。機会があったらぜひお試しください。
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