モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

山が読めますか? と座頭虫(妻女山里山通信)

2010-07-05 | アウトドア・ネイチャーフォト
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 今年の梅雨は、信州にしては珍しく多雨でジメジメとした毎日が続いています。そのせいで里山の草木は成長が旺盛です。一番上の写真ですが、この写真からどれだけの情報が読み取れるでしょうか。山に対するリテラシー(読解力)がないと緑がきれいだなぐらいしか思わないかもしれませんね。

 実はこの森の風景は一年前の同じ季節とはまったく異なった風景に変わっているのです。手前にぶら下がっている枯れたつるが見えます。左向こうの森に枯れた色の部分があるのが見えると思います。これはいずれも冬に私が除伐した跡なのです。除伐したのは山藤と三つ葉通草。どちらもつる植物で、ヤマフジは、花、新芽、実と食べられる山菜です。ミツバアケビの実は、ひき肉をつめてソテーすると大変美味です。

 しかし、この二種とも繁殖力が半端なく旺盛で、放っておくと木々にからみついて繁茂し、葉を覆い隠してしまうため、取り付かれた樹木は、光合成ができずにやがて立ち枯れしてしまいます。写真の空き地(ギャップ)にも大きな木があったのですが、立ち枯れてヤマフジとともに倒れてしまいました。去年の今頃は、写っている木々がつる植物で覆われ鬱蒼としていました。

 昔は、ヤマフジやミツバアケビのつるは、木山で毎年刈りはらわれたり、薪の結束に使ったり、工芸細工に使ったりしましたが、人々の暮らしが山から遠ざかるとともに異常に繁茂し始め、山を荒らす原因の大きな要因になりました。ナツヅタやフユヅタは、木を絞め殺すことはないのですが、ヤマフジやミツバアケビは時に木を絞め殺してしまいます。ですから、里山再生の第一歩は、木を植えることではなく、こういったつる植物の除伐から始まるのです。さらに近年は、帰化植物も奥山まで入り込んでおり、それらの駆除も深刻な問題となってきています。

 そんな梅雨の里山を歩いていると、やたらと脚の長い不思議な虫に出会います。節足動物門鋏角亜門クモ綱ザトウムシ目の座頭虫です。V字に折れた細く極端に長い脚の真ん中に豆粒ほどの身体がある不思議な虫です。クモのようですが、どちらかというとダニに近い仲間です。肉食で虫を食べたり体液を吸ったり、死んだ虫を食べたりするので「森の掃除屋さん」と呼ばれたりします。普通に森を歩いていると目に入らないような大きさです。写真のものは、椎茸の傘の上にいました。

 ナショナル・ジオグラフィックのサイトに「ザトウムシの奇抜な生態」という面白いムービーがありました。アブラムシの体液を吸っています。ハンミョウが現れて壮絶なバトルをするのですが、トカゲの尻尾切りのように自らの脚を切断して逃走します。確かに自然界で見るザトウムシは、脚が欠損しているものが多く見られます。今回撮影したザトウムシは、8本そろっていますが珍しいといえるほどです。今まで撮影したものはほとんどが1、2本脚が欠損しているものばかりでした。

 このザトウムシ、アメリカではあしながおじさん(Daddy Longlegs)と呼ばれています。「千と千尋の神隠し」の釜爺(かまじい)のモデルであり、また「新世紀エヴァンゲリオン」のマトリエルのモデルとなっています。どこかSF的なプロポーションの不思議な虫です。日本で80種類以上、世界では4000種類もいるそうです。座頭虫と書きますが、目はあって大方のクモの様に8つではなく、身体前部の上の突起の両側に一対の簡単な目があります。

 スタジオ・ジブリの最新作は、「借りぐらしのアリエッティ」ですが、身長10センチの女の子は、虫の目線ですね。鬱蒼とした森の中で、地面すれすれに低くなってマクロ撮影をしていると、ふと自分が虫になったような気がするときがあります。

★ネイチャーフォトは、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、地衣類、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、森の動物、特殊な技法で作るパノラマ写真など。
コメント (2)
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