ニュースのタイトルに「陽子の本当の大きさがわかった!」というのがありました。ようこさんの本当の大きさって? どこの陽子さん? そんなものがニュースになるのかなと思っていたら、その後に「物理学者はパニック」と書いてありました。なあんだようしかとすぐに分かりましたが、陽子(ようこ)と陽子(ようし)って全く同じ漢字ですね。今まで考えられていたものよりも、100兆分の3ミリ小さいということが分かったそうです。それっぱか?と思いますが、全ての量子電磁力学がひっくりかえるほどの数値なんだそうです。自然界の不思議、宇宙の不思議は計り知れないものがあります。
梅雨明けの頃になると水田や沼地では、メタリックブルーのか細いトンボが舞い始めます。トンボのメカニックな体や動きにも自然の計り知れない神秘を感じます。とくに私はこのメタリックブルーに輝くアオイトトンボが好きなのです。このトンボが棚田を舞い始めると、ワクワクします。他のイトトンボが翅を閉じて留まるのに対して、このアオイトトンボは開いて留まるのも絵になります。
ところが、このアオイトトンボは人の気配に敏感で、近づくとすぐに逃げてしまいます。けれども見えないほど遠くへ行くわけではなく、少し離れた草の茎に留まるいけず。しかも、細いのでなかなか撮影するのに容易ではありません。かなりの根気が必要です。
アオイトトンボは、成熟すると胸部の横に白い粉がふいたようになります。この個体は尾端の形状から雌だとおもわれますが、胸部の下側から粉をふいたようになりはじめています。成熟する過程なのでしょう。この白い物質がなにか知りたいと思ったのですが、図鑑やネットで調べても分かりませんでした。成熟して出るので性ホルモンとなにか関係があるのでしょうか。ちなみにシオカラトンボの交尾の体位はハート形ですが、アオイトトンボは、3という文字の形です。
トンボの飛び方は、他の昆虫と違って翅を胸の筋肉で直接動かすしくみになっています。これを直接飛翔筋型昆虫といいます。これだと1秒間に20-30回の羽ばたきしかできません。ハチなどは筋肉は翅ではなく外骨格につながっていて、翅ではなく外骨格全体を変形させることにより翅を動かします。この方式だと1秒間に1000回以上羽ばたくことができます。それぞれ一長一短があり、それぞれの環境に適応しているわけです。
トンボは、そのメカニズムと四枚の翅を自在に操る(前翅と後翅が交互に動く)ことにより、ホバリングしたり、急に方向を変えたり、時速60キロ以上で飛んだりできるわけです。蝶は、それができないからヒラヒラ飛ぶわけですが。私はトンボのむき出しになった背中のメカニカルな部分が好きで、思わず見入ってしまいます。撮影して拡大してみると、翅を動かす仕組みが見えてきます。
「トンボの目玉は水色眼鏡」という歌詞がありますが、実は真ん中にもう一つ御釈迦様の第三の目、正中眼のような目があります。一万個の目を持っているのになぜもう一つ必要なのか分かりませんが、トンボはこの大きな目が命なのです。イトトンボは特に体が細いので、視野が広く獲物や敵を発見しやすくなっているのです。近づいてマクロ撮影をするのが難しいわけです。しかし、トンボが見るこの世界ってどんな風に見えるんでしょう。
トンボは、弥生時代に稲作が入ってきてからずっと日本人の友達でした。「銃後でねえやは嫁にゆき」という歌詞があります。姐や(ねえや)は、女中さん(乳母)のことだそうです。その後、十五と歌詞が変えられてしまったようですが。子供の頃は15で嫁に行ったのか、早いな、と思っていました・・・。「おわれて見たのはいつの日か」も追われてではなく、ねえやに背負われてなんです。それを知ったのは、確か叔母が使っていた古い小学唱歌の本を見つけた時だったと記憶にあります。「赤とんぼ」は、作詞家・三木露風の乳母への郷愁と母喪失の哀しみとが織り混ざった子守唄です。
また、空にたくさん飛ぶトンボは平和の象徴でもあるんですね。秋になると山からたくさんのアカトンボが下りてきて空を真っ赤に埋め尽くして飛ぶ様は、日本人の心に残る平和な郷愁の風景なのでしょう。指をくるくる回してトンボ捕りをした経験は誰でも一度はあるでしょう。それとも今時の子供達は経験できない子もいるのでしょうか。だとしたらそれは大人の責任です。今、メカトンボというラジコンで飛ぶおもちゃがありますが、これも本当のトンボを知っていればこそ楽しめるものだと思います。
★【MORI MORI KIDS(低山トレッキング・フォトレポート)】夏の信州のトレッキングに、鏡台山をごアップしました。蝶の写真とパノラマ写真、鏡台山から見えた富士山のカットがご覧いただけます。