




三連休の最終日、突然思いついて登った鏡台山は蝶のパラダイスでした。今年は梅雨に雨が多く豪雨もあったせいか、ゼフィルスの発生がほとんど見られません。帰りに立ち寄ったポイントでもわずかに数頭見られたのみです。多雨が影響したのでしょうか。オオムラサキの羽化にも影響しそうで心配です。
この季節の低山は薮になり、スズメバチ、ヤブ蚊、蛇、熊の心配があるせいかハイカーも減少します。それでも盆地にいるよりはずっと涼しく、北アルプスの大パノラマが爽快な気分にさせてくれます。鏡台山は、昔は埴科郡の中心に位置する山として親しまれ、松代町、屋代町、坂城町などから皆頻繁に登ったそうです。一時は登山道も廃れ、10年ほど前に来た時は、笹平登山口は完全に薮になり閉ざされていました。それが数年前に千曲市や坂城町で登山道整備が行われ、標識も立ちました。
しかし、松代から登る道は全く未整備の状態で残念です。妻女山や象山から戸神山脈を登るルートは、非常に長いこともあって歩く人もまばらなようですが、最近はトレランの人たちが走っているようです。西条の入から稲葉を経由して三滝山へのルートは、武田別働隊の辿ったといわれる古道ですが、今は林道が通じています。松代からの登山道も整備されるといいのですが・・・。
さて、鏡台山の蝶ですが、ちょうどノアザミとヨツバヒヨドリが満開だったため、群舞が見られました。まず目についたのはヒョウモンチョウの仲間。特にツマグロヒョウモンが目立ちました。ツマグロヒョウモンは南方系の蝶ですが、近年温暖化とともに生息地が北上し、妻女山でも見られる様になりました。体内に毒を持つマダラチョウの仲間のカバマダラに擬態しているといわれ、雌の方が前翅に特徴的な黒と濃紺の模様があることで知られています。写真は地味な雄です。
次に撮影したのはウラギンスジヒョウモンの雄。近年個体数が減少している蝶だとか。観察しているとノアザミよりもヨツバヒヨドリに多く吸蜜していました。盛夏には休眠する蝶なので、もうすぐ見られなくなると思います。そのほかにもヒョウモンチョウの仲間が舞っていたのですが、はっきりと同定できる写真が撮れずに難儀しました。そして、帰路には、このウラギンスジヒョウモンが、サキグロムシヒキに襲われて運ばれて行くのを目撃。撮影しました。いずれフォトドキュメントの手法で綴るトレッキング・フォトレポート【MORI MORI KIDS】にアップします。
三番目は、蛾とよく間違えられるセセリチョウの仲間からイチモンジセセリです。吸蜜中の雌を、必死に雄が追いかけていました。これから秋にかけて山から町中まで至る所で目にする蝶です。丸顔に大きな目が特徴的で、なかなか愛嬌のある顔です。
四晩目は、キアゲハ。普通のアゲハとは前翅のつけねに黒い面があることで区別ができます。こちらは、ヨツバヒヨドリよりノアザミの方が好みのようでした。種類によって好みの花(蜜)があるようです。幼虫は菜園の害虫ですが、山で見る成虫は派手で華やかです。北方系の蝶なので、温暖化とともに生息域が北上している蝶です。
最後に、なぜか日向には出ず、日陰のヨツバヒヨドリばかりを選んで吸蜜していた一頭のアサギマダラ。茶褐色の翅の中に浅葱色を帯びた白い部分があるのが特徴的。黒のボディは白い水玉がおしゃれです。タテハチョウ科マダラチョウ亜科の蝶で、ゆったりとひらひらとした舞い方が優雅。長い距離を移動することでも知られています。いわば「ひとり旅するロマンの蝶」。成虫は台湾や南西諸島とから日本本土へ飛翔し、その子孫が今度は南方へ旅立ちます。季節風や台風にのって一日200キロ以上移動することもあるそうです。
どこからともなく現れ、ひらひらと優雅に舞うこの蝶を見ていると、どこに大海原を渡るエネルギーが隠れているのだろうと思わずにはいられません。舞い方はシジミチョウやモンシロチョウなどのようにせわしなくはなく、ひらひらと舞ったかと思うと、すーっと滑空、それを繰り返します。そのひらひらとした省エネタイプの飛び方が秘密かもしれません。台風や季節風もうまく利用するようです。五月には2000m級の山頂付近でも見かけました。旧盆を過ぎる頃になると里山でも見られる様になります。
そして帰路にはゼフィルスを探したのですが、なかなか群舞にはお目にかかれませんでした。梅雨の多雨のためか発生が遅れている様です。
★蝶の写真は、ネイチャーフォトは、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】の蝶1.2.3.4をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、地衣類、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、森の動物、特殊な技法で作るパノラマ写真などもあります。