モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

朱留の翡翠色に輝く陣場平(妻女山里山通信)

2010-07-15 | アウトドア・ネイチャーフォト
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  妻女山展望台から15~20分、奥にある駐車場右手の林道を登ると、遥か右手に冠着山(姥捨山)が見える長坂峠(東風超)に着きます。ここで道は分かれ、右へ行くと斎場山。左へ行くと陣場平を経て天城山、鞍骨城と続きます。梅雨の晴れ間の山仕事のついでに陣場平へ。林道ではなく旧山道と獣道を利用して私が去年作った近道で直行しました。冬には地面も見えていた陣場平は、訪れる人もいないため草で覆われ鬱蒼としています。

 鉈鎌で獣道を広げながら落葉松の森へ入り、再びギャップ(空き地)に出ると、山椒の木の幹に2センチくらいの実がなっていました。山椒の実は3ミリぐらいですし、幹にはなりません。近づいてよく見ると蔓(つる)がからみついていて、その幹に実はついています。見覚えのある実は奇麗な緑で、白い斑点が星の様に飛んでいます。なんだろうと必死に思い出そうとしましたが、浮かんできません。よく見ると蔓は2m近くあります。こんな蔓性植物はあったかなと思いました。とりあえず実をひとつ採ってかじってみました。かなり酸味のある味ですが、思い出しません。さらに絡み付いているものを数カット撮影して帰ってから同定することにしました。

 ネットで蔓性植物やつる植物などで検索をしてみました。手持ちの植物図鑑も調べました。分かりません。どこにもこんな蔓性植物は載っていないのです。しかし、実は見覚えがあります。帰化植物でもないようです。完全に行き詰まってしまいました。こんな時に利用するのがネットの「この木なんの木」の掲示板です。早速アップロードしました。半日ほど経ってから見てみましたが回答はありません。これは難しいのかなと思いました。実には見覚えがあるのに・・・。不思議なつる植物だなあ・・・。

 そして、翌日の夜、開いてみると回答が寄せられていました。ボケ、クサボケで調べてみてくださいというものでした。驚きました。ボケ(木瓜)は中国大陸原産で、この山にはありません。しかし、クサボケ(草木瓜・朱留・樝子・地梨)なら林道脇や日当りのいい尾根筋にいくらでもあります。花も実も知っています。なのに気がつかなかったのは、蔓性だったからでした。蔓性植物で調べても出てこないわけです。どの図鑑にも落葉小低木とあり、蔓性とは書いてありません。しかし、このクサボケは、確かに山椒の木にまきついていました。

 ブログの写真はでは分からないと思いますが、MORI MORI KIDS Nature Photograph Galleryの樹木のページに載せたこちらの写真では、山椒の木に巻き付いている様子がよく分かると思います。実の色は日本の伝統色でいう薄萌黄ですが、青味を帯びた翡翠色のものもあり、雨露に濡れた朱留は、さながら鬱陶しい梅雨の森に輝く宝石の様です。朱留とは春に咲く朱色の花の事でしょう。なお、写真に写っている葉はクサボケ以外にミツバアケビも絡み付いていたので、山椒、三葉通草、草木瓜の三種類です。

 クサボケ(草木瓜)はバラ科で、別名を朱留(シドミ)、野木瓜(ノボケ)、小木瓜(コボケ)、地梨(ジナシ)、和木瓜(ワモッカ)、樝子(サシ)などといいます。このクサボケの実で作るクサボケ酒は、山の実で作る果実酒の中でも格別の味といいます。熟れすぎると酒が黒ずむというので、晴れ間を狙って採りに行きたいのですが雨が止みません。恨めしい梅雨空が続きます。

★クサボケの花は、草木瓜の 朱儚くて 刺の道(妻女山里山通信)をご覧ください。
妻女山から陣場平への行き方
妻女山から斎場山への行き方

★ネイチャーフォトは、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、地衣類、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、森の動物、特殊な技法で作るパノラマ写真など。
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