人には、それぞれの魂の中に、自分で取り組んで行かなければならない、十字架があります。人生の試練というのは、自分の内部にある十字架が、周囲の環境に投影して、この世界に起こってくる個人の魂にとって最も重要な経験と言えるのではないでしょうか。そこから何を学び取り、どう自分自身の魂と深くかかわっていけるかが、その人の人生の豊かさなんだと思います。
人は皆、それぞれの感性の中に、容易には溶けないガラスの十字架を抱き続けている。その痛みを一つ一つ食べながら、涙と言葉で真珠のように少しずつ浄化していくしかないのです。誰も代わってあげることはできない。ただ、お互いに瞳や言葉を交わしながら、力を与え合い励まし合うことはできます。
(2004年11月ちこり32号、通信欄)