みすずの詩は私も大好きです。みずみずしい感性と優しく平易でありながら、見事に真実を打ち抜く言葉。彼女の命が短く終わってしまったのは、時代のせいでしょう。彼女は現代にも通じる素晴らしい感性と表現力を持っていましたが、当時の男性優位の社会通念は、彼女の才能が伸び伸びと翼を広げていくことを許しませんでした。
女性が、相応の的確な力量をもって自己を表現していくことは、現代ですら難しいものですから。でも、いつの時代でも、それをやり抜こうとしていく人はいるのです。迷ったり、間違ったりしながらね。
みすずは時代の酷い仕打ちの前に、敗れ去ってしまいましたが、しかし彼女の運命はそのまま強いメッセージとなって、私たちに伝わってきます。大事なことは何なのか。どうやって間違いを正すべきか。彼女の敗北と失敗こそが、私たちを照らす大きな星の一つです。
(2004年11月ちこり32号、通信欄)