アシメックは林檎を摘みながら、ふとオラブのことを思い、少し気持ちが暗くなった。この山のどこかに住んでいるというが、何を食っているのか。秋には実りがあるからいいが。
いつまでも放っておくわけにはいかない。なんとかしてやらねばなるまい。
アシメックがそう思った時だった。少し離れたところから、子供の泣き声が聞こえた。アシメックははっとして、林檎を摘むのをやめ、振り向いた。
「どうした!?」
すると、女がひとり、アシメックに近づいてきて、言った。
「榾のとがったのを踏んで、子供が足を怪我したの。足袋を脱いで裸足で歩いていたらしいわ。泣いてる。どうしたらいいかしら」
「手当はしたのか」
「一応なめてあげたけど」
アシメックは女に導かれて、怪我をした子供のところに行った。こういうトラブルはいつものことだ。子供はいつでも予想外のことを引き起こす。
怪我をしたのは男の子だった。栗の木の根元に座り、右足を伸ばして、大声で泣いている。アシメックは近づきながらなだめるように言った。
「どら、見せてみろ」