その様子を見て、ソミナも泣いていた。出産の手伝いをするのは、いつもこの瞬間が、
うるわしいほど幸福だからだ。
ソノエは胎盤を皿にのせ、エマナの方に持って行った。エマナはそれを二口三口ほど食った。うまいものではなかったが、それを食わないと乳が出なくなると言われていたのだ。エマナが胎盤をちぎって少し食べたのを確かめると、ソノエはそれをすぐに下げて、外に出た。あとは、日に干して乾かしたものを砕いて、少しずつ食べればよかった。
エマナが子を産んだことは、その日、風のように村中に伝わった。新しい子供が生まれることは、村中の悦びだったので、みなが祝いの品を持って、エマナのところに来た。産後の肥立ちがよくなるように、みなが栗や鹿の干し肉を持って来てくれた。みな、赤子を見るたびに目を輝かせた。生まれたばかりの小さい赤子を見ることは、この上ない幸せでもあるのだ。
「この子だな、アルカラから来たばかりの子は」
「かわいいねえ。ちょっと抱かせておくれ」
「アシムというんだよ」
「いいねえいいねえ。至聖所にはおれが報告しといてやるよ。立てるようになったらおまいりにいけよ」
男も女もみな見に来た。トレクももちろん見に来た。痛いことにはなったが、男にとっても、自分の子供が生まれることは幸福であったのだ。
エマナももう、特にトレクを責めなかった。今は赤子を抱いているだけで幸せだった。
「かあちゃんの子だ、おまえは、アシム」と言いながら、エマナは子を片時もはなさず、細やかに世話をした。黒い目の大きな、かわいい子だった。やがて大きくなれば、みんなのためにいいことをする、いい男になるだろう。アシメックのように。
外には冬の冷たい風が吹いていた。だが、赤子がいるというだけで、みな春のように暖かい気がした。また、気合を入れて働かねばならない。そう思えるのは、子供というものが実にいいものだからだ。