よいものは大事にせよ、というのはカシワナカの教えだった。神の教えを守り、正しいことをしていけば、人はどんな難しい試練に出会おうとも、必ず最後には勝つことができると。
そんなある日のことだった。
冬も最も厳しい寒さを越え、いくぶん春の気配が感じられるようになってきたころのことだ。
またオラブが出た。
アシメックのところに、シロルという男が訴えてきた。家に蓄えておいた栗の壺をごっそり盗まれたと。オラブに違いないと。
「おれの子供にやろうと思って、たくさん皮をむいておいたんだ。人に見えないところに隠しておいたのに、一体どうやってわかったものか。オラブのやつめ」
「間違いないのか」
「ものがなくなったら、絶対にオラブのせいなんだよ」
アシメックはため息をつき、腕を組んだ。いつまでも放っておくことはできないと思っていたが、とにかく何かをしないわけにはいくまい。そう思ったアシメックはミコルに相談した。するとミコルは、眉間に深々としわをよせつつ、まじないをつぶやきながら、風紋占いをした。