世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

ティルチェレ物語 11

2013-10-23 04:08:36 | 薔薇のオルゴール
10 ヨーミス君の得意技

 アメットさんは、ファンタンを助ける方法を書いたビラを作り、学校の印刷機で大量に印刷した。コムと子どもたちが、そのビラを村中に配った。村人たちは首をかしげながらも、自分の持っている本に四角い窓を書いた。だがファンタンは出てこない。

 ヨーミス君は決意した。これができるのは、ぼくしかいない。ファンタンを助けるために、やってみよう。ヨーミス君は大きなリュックに詰められるだけビラを詰めた。そして駅から列車に乗って、都会に向かった。

 都会の町に降り立ったヨーミス君は、ビルを探した。人通りの多い道に面した、適当なビルを。そうとも、ヨーミス君の得意技は、ビル登り。5階建てくらいなら、楽に登れる。でも、できるならもっと高い、目立つビルがいい。ヨーミス君は町を探して、ある10階建てのビルを見つけた。自分が登れる高さより、はるかに高い。けれど、これくらい登らなければ、ファンタンを助けられないような気がしていた。ヨーミス君は挑戦した。

 5階までは、楽に上れた。けれども6階と半分くらいになると、さすがに疲れはじめた。腕がしびれてきた。だがヨーミス君はあきらめない。ビルを上り続ける。
 下の方では、ビルを上るヨーミス君を見つけて、人が集まり始めた。7階を過ぎると、一度手が滑って落ちそうになった。だが何とか体勢を取り戻して、ヨーミス君は登り続ける。

 下の騒ぎが大きくなった。近くのテレビ局から中継車が飛んできた。ヨーミス君のビル登りのニュースは、村にまで届けられた。テレビを見たノーラさんがびっくりしていた。

 そして、ようやく10階まで登ったヨーミス君は、リュックにしかけたヒモをひっぱった。するとリュックが開いて、中に詰めたビラが散らばった。

「ファンタンを助けてください!」と書いたビラは、町中に広がった。

 (つづく)


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