世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

ティルチェレ物語 14

2013-10-26 05:04:35 | 薔薇のオルゴール
13 ツユクサ色の手紙

 ファンタンが帰って来てから、果樹園のりんごが太り始めた。湖の魚も臭くなくなった。村人たちはしばらく、お守りを持たず、コーヒーやお茶にどんぐりが入っているのを見つけるたびに、歓声をあげた。
 森も次第にきれいになった。クリステラの病気も治り、元の祠の管理小屋に戻った。

 グスタフは、教会でヨーミス君とアメットさんとお茶を飲みながら話をしていた。本当によかったねえ、とみんなで喜んだ。そうして、自分のお茶に口をつけようとした時、中にどんぐりが入っているのを見つけて、グスタフは、びっくりした。

 嬉しい気持ちを抱いて、教会を出るヨーミス君とアメットさん。ふたりはしばらく並んで村の道を歩いた。アメットさんは、ヨーミス君が好きなようだ。並んで歩いていると、とても幸せそうだ。ヨーミス君もまんざらではない。

 そうやって、二人が並んで歩きながら、道が、森の隅の野原に差しかかったときだ。ふと、野原に、たくさんのツユクサが咲き乱れているのを見つけた。ヨーミス君はびっくりした。確か、来るときには咲いてはいなかった。それに、ツユクサが咲くには、まだ季節が早すぎる。

「ファンタンのお礼よ、きっと」とアメットさんが言った。ヨーミス君は嬉しくなって、青いツユクサの咲き乱れる野原に飛びこんでいった。空から、おとうさんとおかあさんが、自分を見つけて、見てくれているような気がした。

 ツユクサの中に立ちながら、ヨーミス君は空に向かい、力いっぱい叫んだ。

「おとうさん、おかあさん、ぼくは元気です。がんばっています!!」

(おわり)




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