9 本の暗号
グスタフは、ヨーミス君とアメット先生のところに、自分が買ったベックの本を持って行って、自分が見つけた奇妙な発見のことを教えた。なんと、本の中の文字が、虫のように動くと言うのだ。言われてよく見ると、並んでいる文字のなかで、一ページか二ページの間に一文字ずつという割合で、虫のように震える文字がある。
アメット先生は、その震える文字を丁寧に見つけていって、それを並べてみた。するとその文字が、一つのメッセージになっているのを発見した。
そのメッセージはこう言っていたのだ。
「ふぁんたん ほんに とじこめられた たすけて でられない」
ヨーミス君は驚いた。なんと、ファンタンはベックの本の物語の中に閉じ込められてしまったのだ。
「どうしたら出られるの?」とヨーミス君は本に尋ねてみた。そうしたら今度は、文字が青く光り始めた。アメットさんがその文字を並べてみた。
「さいごのページに しかくいまどを かいて でられる」
そこでヨーミス君は、その本の最後のページに、ペンで四角い窓を書いてみた。けれどもファンタンは出てこない。コムが言った。
「きっと、百万部の本の中の、たった一冊なんだよ。どれかに閉じ込められているんだよ」
みんなは頭をかかえた。どうすればいいだろう。国中に売られたたくさんの本の中から、たった一冊の本を見つけるだなんて。
みんなは頭を寄せ合って、必死に考えた。
その頃、村の役場では村長さんが、ベックに電話をしていた。本が出てから、ファンタンが村からいなくなったと。そうしたらベックは言ったそうだ。
「何を言ってるんですか。妖精なんて、物語の中だけの存在でしょう」
なんてことだ、と村長さんは言った。クリステラが悪魔だと言ったわけが、わかったように思った。いい人だと思ったのに、あんなに面白い話を書いたのに、本当はファンタンを信じていないなんて。あのいたずらでかわいくてやさしい、ファンタンを、嘘だというなんて。
村長さんはあまりのことに、涙を落とした。ファンタンは、妖精を信じる心のない人たちによって、実在しないものとして、架空の世界に吸い込まれてしまったのだ。
(つづく)
グスタフは、ヨーミス君とアメット先生のところに、自分が買ったベックの本を持って行って、自分が見つけた奇妙な発見のことを教えた。なんと、本の中の文字が、虫のように動くと言うのだ。言われてよく見ると、並んでいる文字のなかで、一ページか二ページの間に一文字ずつという割合で、虫のように震える文字がある。
アメット先生は、その震える文字を丁寧に見つけていって、それを並べてみた。するとその文字が、一つのメッセージになっているのを発見した。
そのメッセージはこう言っていたのだ。
「ふぁんたん ほんに とじこめられた たすけて でられない」
ヨーミス君は驚いた。なんと、ファンタンはベックの本の物語の中に閉じ込められてしまったのだ。
「どうしたら出られるの?」とヨーミス君は本に尋ねてみた。そうしたら今度は、文字が青く光り始めた。アメットさんがその文字を並べてみた。
「さいごのページに しかくいまどを かいて でられる」
そこでヨーミス君は、その本の最後のページに、ペンで四角い窓を書いてみた。けれどもファンタンは出てこない。コムが言った。
「きっと、百万部の本の中の、たった一冊なんだよ。どれかに閉じ込められているんだよ」
みんなは頭をかかえた。どうすればいいだろう。国中に売られたたくさんの本の中から、たった一冊の本を見つけるだなんて。
みんなは頭を寄せ合って、必死に考えた。
その頃、村の役場では村長さんが、ベックに電話をしていた。本が出てから、ファンタンが村からいなくなったと。そうしたらベックは言ったそうだ。
「何を言ってるんですか。妖精なんて、物語の中だけの存在でしょう」
なんてことだ、と村長さんは言った。クリステラが悪魔だと言ったわけが、わかったように思った。いい人だと思ったのに、あんなに面白い話を書いたのに、本当はファンタンを信じていないなんて。あのいたずらでかわいくてやさしい、ファンタンを、嘘だというなんて。
村長さんはあまりのことに、涙を落とした。ファンタンは、妖精を信じる心のない人たちによって、実在しないものとして、架空の世界に吸い込まれてしまったのだ。
(つづく)