アントワーヌ・ジャン・グロ、19世紀フランス、新古典主義、ロマン主義。
才ある女性として、人類史の中でわずかに日が当たる存在が、古代ギリシャの詩人サッフォーである。現残する詩も断片的であり、女性同性愛者であるという伝説も、男が彼女を色目で見てきたという証拠であろう。どんなに力が高くとも、男は女性を正当には評価しないのだ。この図はある美しい青年との恋に破れ、絶望してレフカス島の崖から身を投げようとしている詩人の図である。もちろんこの伝説も眉唾物だ。どうしても女を男に結び付けたい男が、こういう話をつくるのだ。実際のサッフォーは、女子の教育に情熱を傾けていることなどからして、より建設的な人格だったと思われる。グロはロマンティックに美しく描いてあるがね、わたしはもっと立派に誇り高い姿で描いて欲しい。女性はもっとすばらしいものだからだ。男にふられたくらいで自分を捨てたりなどしない。