このたびの東日本大震災で被災された多くの皆様へ、謹んでお見舞い申し上げます。
大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。
また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。
バドミントンでペアを組んでいたパートナーの引退を機に、Nも現役を退くことにした。大学卒業後については、地元企業への就職が決まり、長年住んだアパートを引き払うことになった。
部屋の一角には大小さまざまな大会で勝ち取ったトロフィーや楯を年代順に整然と並べているのだが、これをどうするか、彼女は迷っていた。
それまでは運が逃げるのが怖くて、掃除などで動かしたりするのも必要最小限にしていたほどだったので。
実家へ送ってまた元のように並べるか、あるいは思い切って処分するか。
Nは一番古いトロフィーをそっと手に取った。
小さく軽かったが、エースパイロット(撃墜王)を自認している勝気な彼女にとっては最初の誇らしい“撃墜マーク”だった。
なにげなくそれをひっくり返すと、台座の下に古ぼけた紙片が張り付いている。
そこには彼女自身の文字で、電話番号が記されていた。
高校入学後すぐに意気投合してペアを組むことになったYから自宅に初めて電話をもらった際に、メモしたものだった。
あの時私はYと話して、彼女の高い熱量に触れて、何かが始まる予感がしたのだ。
Nはその紙を丁寧に畳んで財布に入れた。
これさえあればいい。
きっとこれからも私を守ってくれるだろう。
トロフィーたちは明日、廃品回収へ出すことに決めた。