このたびの東日本大震災で被災された多くの皆様へ、謹んでお見舞い申し上げます。
大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。
また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。
「長くお世話になった元現場監督さんが久しぶりに遊びにいらした。
退職して今は悠々自適の生活で、大震災で亡くなった奥様の写真を胸ポケットに入れ、温泉旅行などを楽しんでいるそうだ。
裸一貫から一代で会社を大きくした高齢の会長さんと、その息子の社長さんの間に挟まって苦労したのが退職の遠因と人づてに聞いていた。
『ねえ、七半沢さん、あちらの若奥さんは仕事ができる方じゃありませんか?』
『うん、やり手だよ。社長より、あのひとに任せた方がうまく行くんじゃないかと思っていたくらいだ。井浦さん、会ったことがあるの?』
『ええ、御社の玄関で一度すれ違った程度ですが。』
会長さんに折り入って頼みごとがあって訪問した際のこと、用が済んで玄関に出ると、来た時はなかったネイビーブルーのバスケットシューズが目に入った。
一週間ほど前、出張のお土産にと当時中学生だった娘に買ってきたニューモデルだった。
珍しいこともあるものだ、と靴を見つめていたその時、反対側のドアが開き、事務服姿の女性が現れた。
いでたちとは裏腹に、どう考えてもただの事務員さんではない。
丁寧にあいさつした僕の顔と、自分のバスケットシューズを、彼女はそのアーモンドアイで鋭く一瞥すると、音も立てずに出て行った。
ここにはメドゥーサがいる。
僕は震え上がった。」