このたびの東日本大震災で被災された多くの皆様へ、謹んでお見舞い申し上げます。
大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。
また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。
父が亡くなったのは私が大学に進学した年でした。
まだ58歳でした。
最後に会ったのは、その年の秋、ひょっこりキャンパスまで訪ねてきてくれた時です。
少し前から病気がちでずいぶん痩せていましたが、相変わらず仕立ての良いスーツをりゅうと着こなしていました。
ミオが背が高いのは父親似なのね、とクラスメートに冷やかされながら、私は内心得意でした。
いつだって父は私の引き立て役でしたから。
秋色のキャンパスを見渡し、うらやましいな、とつぶやいたので、何が?と尋ねたけれど、答えはありませんでした。
ホテルまで送るから、との私の申し出を断り、一人で帰って行きました。
別れ際、手品師のような気取った仕草で財布からお札を全部取り出すと、同じように私のバッグへ滑り込ませました。
「ヤング・レデイはなにかとお金がかかるだろうから、ね。」
遺言により、父の亡骸はA県のH大学病院へ献体されました。
遺骨は構内の共同墓地に埋葬されています。