院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

タバコと肺がん

2007-07-31 13:23:44 | Weblog
 喫煙者はそうでない人より何倍も肺がんにかかりやすいことは、よく知られている。

 意外に知られていないのは、タバコが肺がんの「原因」とは言えないということである。

 確かにタバコと肺がんは「並行関係」にある。これは統計学的な事実である。だが「並行関係」と「因果関係」は別であるということを、知っている人は少ない。

 タバコと肺がんの統計学的「並行関係」は、そのデータの解釈をいくとおりも許す。「タバコは肺がんの原因である」というのは、いくつもある解釈のうちの一つに過ぎない。

 私の恩師(ヘビースモーカーである)は、「肺がんになりやすい素因をもった人は、タバコを好む」という解釈を採用した。(だから、そういう人はタバコを吸わなくても肺がんになる、という解釈である)。

 一見、屁理屈のように見えるかもしれないが、実はこの解釈は、「タバコは肺がんの原因である」という解釈と、学問的にはまったく同等の権利でもって成立しうるのである。

 最近、わが国で肺がんを発症させる遺伝子が見つかった。喫煙者にこの遺伝子をもった人が多いという。この遺伝子が生得的なものなら、私の恩師の解釈が支持されることになる。

 この遺伝子がなんらかの突然変異によってできたものであれば、タバコは肺がんを発症させる遺伝子を造るという解釈も成り立つ。

 この遺伝子が生得的か、突然変異かによって、議論はフリダシに戻ってしまう。

 ついでに言うと、結核の減少とTVの普及とは「並行関係」にある。だからと言って、TVには結核を予防ないし治癒させる効果があるという解釈は誰も採らないだろう。

 くどいようだが、もう一度言っておく。「並行関係」は「因果関係」を保障しない。統計学上もっとも誤解されやすい部分だから、何度でも言う。