「アニメに出ていたけれど行ったことがないから」と神田明神への案内を頼まれたので出かける。会社の先輩曰く車ではよく前を通り過ぎるので気になっていたとのことだが、目的地の秋葉原から神田明神へ戻るには上り坂を歩かなければならないため、多分億劫出会ったのだと思う。手頃な駐車場もない。湯島聖堂を覗き見して曇り空の御茶ノ水を歩く。とろりと歩くとすぐ着いた。参道前では甘酒屋が紙コップ一杯350円で甘酒を売っている。後で飲みましょうと先輩をせっついて鳥居をくぐると、一月の終わりであるにも関わらず手水から列が続いており、がらんどうの湯島聖堂とは対象的に参拝客が大勢並んでいた。
堂内への参拝の列はさらに長く続いており、一定の人数をまとめて堂内に上げては次の客を呼ぶ様子はどこかのテーマパークに似ていた。堂前の賽銭箱に先輩と並ぶ。神田明神は色が華やかで社務所とは別に地下を含めた三階建ての土産物売り場がある。声が鳥のように頭の上を掠めていた。先輩の並んだ列はすいすい進む。私の並んだ列も同じペースで進む。けれども私の列はやがて止まってしまった。前を覗き見ると『モンスターハンター』に登場するロゴをプリントした布のショルダーバッグに柿色のコートを着た背の低い男が頭を下げて熱心に祈っていた。彼が祈る間左右の列の人はどんどんと進み、私の背中には怪訝な視線がじりじりと刺さっていく。彼は祈り続けていた。ショルダーバッグには『ラブライブ!』のキャラクターのストラップがぶら下がっており、内心少々呆れた。推しへの祈りがよほど強いのだろうか、正味三分ほど彼は頭を下げて祈ると、突然かくりと一礼して列を離れた。
幼さが多分に残る彼の頬には文字通り大粒の涙が流れていた。柿色のコートの下の学生服はあっという間に絵馬の並ぶ土産物の方に消えていき、私の前に並ぶ女性はパンパンと弾みよく柏手を鳴らしてきびきびとお祈りを済まして場所を空けた。とうにお参りを済ませた先輩も柿色のコートの行き先を見ることなく眼で追いかけている。私が参拝を済ませて頭を上げた頃には、境内に彼の姿はなかった。
堂内への参拝の列はさらに長く続いており、一定の人数をまとめて堂内に上げては次の客を呼ぶ様子はどこかのテーマパークに似ていた。堂前の賽銭箱に先輩と並ぶ。神田明神は色が華やかで社務所とは別に地下を含めた三階建ての土産物売り場がある。声が鳥のように頭の上を掠めていた。先輩の並んだ列はすいすい進む。私の並んだ列も同じペースで進む。けれども私の列はやがて止まってしまった。前を覗き見ると『モンスターハンター』に登場するロゴをプリントした布のショルダーバッグに柿色のコートを着た背の低い男が頭を下げて熱心に祈っていた。彼が祈る間左右の列の人はどんどんと進み、私の背中には怪訝な視線がじりじりと刺さっていく。彼は祈り続けていた。ショルダーバッグには『ラブライブ!』のキャラクターのストラップがぶら下がっており、内心少々呆れた。推しへの祈りがよほど強いのだろうか、正味三分ほど彼は頭を下げて祈ると、突然かくりと一礼して列を離れた。
幼さが多分に残る彼の頬には文字通り大粒の涙が流れていた。柿色のコートの下の学生服はあっという間に絵馬の並ぶ土産物の方に消えていき、私の前に並ぶ女性はパンパンと弾みよく柏手を鳴らしてきびきびとお祈りを済まして場所を空けた。とうにお参りを済ませた先輩も柿色のコートの行き先を見ることなく眼で追いかけている。私が参拝を済ませて頭を上げた頃には、境内に彼の姿はなかった。