電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

諸田玲子『狐狸の恋~お鳥見女房(4)』を読む

2008年11月21日 06時24分14秒 | 読書
新潮文庫で、諸田玲子著『お鳥見女房』シリーズ第4巻『狐狸の恋』を読みました。なんともすごい題名です。キツネとタヌキの恋ですから、つい化かしあいを連想してしまいますが、もちろんそんな内容ではありません。

第1話「この母にして」。地味な存在だった長男の久太郎、村人に無理難題を要求する鷹匠の専横に怒り、童子を狙って急降下した鷹を打ちすえた村人を救います。雨の中の、ドラマティックな場面です。鷹姫こと恵以が珠世に贈った尾鈴というのも、凛としたイメージです。
第2話「悪たれ矢之吉」。先に生まれた兄、後に生まれた弟、それだけで立場が違う。子どもの頃には何とも思わないが、成長すると様々なことを考えます。理解し、受け入れるまでに、ダイナミックな過程を経ていきます。
第3話「狐狸の恋」。次男の久之助は、綾の庇護者となっている叔父から直々に依頼を受け、ある旗本のお側女の身辺警護を引き受けます。綾の手前、いいところを見せようとしますが、どっこい、大人の恋でした。
第4話「日盛りの道」。負傷した夫から託された血文字の扇。意味がわからず歩く道と使命感で歩く道とでは、日盛りの道も違って見えることでしょう。菅沼家に嫁いだ自覚が生まれ、夫婦の信頼が確かめられた事件です。
第5話「今ひとたび」。水野越前守が老中を罷免され、鷹匠の和知家も影響を受けます。愛鷹を処分されると思った鷹姫こと恵以は、鷹を連れたまま失踪します。久太郎には心当たりがありました。気骨のある若者と勝気で純な娘とが、互いの心を確かめあいます。いい場面です。
第6話「別の顔」。うーむ。まさしく「小さな親切、大きな下心」のお話ですね。
第7話「末黒の薄」。捨て子の一件は、実は上意による仇討ちがからんでおりました。久右衛門と久之助が赤子の母親を小者に仕立て、大名屋敷に乗り込みます。事情を知った綾は、久右衛門と亡母との関係に思い至ります。古い怨みが和解へ転じただけでなく、久太郎と恵以との関係も、思いもかけない形で急展開します。なるほど、です。

さて、次作はどうなるのか、まだ文庫化されておりません。しばらく楽しみに待つことにいたしましょう。
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