電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

佐伯泰英『朔風ノ岸~居眠り磐音江戸双紙(8)』を読む

2008年11月25日 06時30分45秒 | -佐伯泰英
佐伯泰英著『居眠り磐音江戸双紙』シリーズ、第1巻の迫力に思わず魅せられて読みはじめ、第4巻で呆れてやめようかと思ったものの、中居半蔵さんの物産プロジェクトが気になり、ここまで来ました。とうとう第8巻『朔風ノ岸』です。岸と言うからには船が着く話に違いない、と勝手に決めつけて読みはじめました。

第1話「府内新春模様」。年の暮れの気ぜわしい時にスリ騒ぎがあれば、たいていの人は疑わずに信じてしまいそうですが、磐音は前提を疑う、という力を持っています。そこが、南町奉行所の知恵者である笹塚孫一が買っているゆえんなのでしょう。
第2章「三崎町初稽古」。豊後関前藩の物産プロジェクトは、ゆっくりではありますが次第に準備が進んでいるようです。若い藩士二名を乾物問屋の若狭屋に案内した後に、神田三崎町の佐々木玲圓道場に案内します。二人は、その初稽古で磐音のすごさをあらためて知り、今津屋での待遇に目を白黒させます。磐音はさらに南町奉行所に呼ばれ、狂信的な血覚上人一派を操る人物が、鐘ヶ淵のお屋形こと遠江横須賀藩の西尾幻楽という隠居老人であることを知らされます。藩屋敷前で江戸家老福坂利高に嫌味を言われた上に、屋敷の周りをうろちょろするな、と叱られます。この人、サラリーマン世界の不人気上司の代表みたいな役回りですね。
第3章「早春下田街道」。品川柳次郎が持ってきた働き口は、寄合旗本大久保家の知行所である伊豆修善寺でのやくざ抗争を鎮め、大久保家の支配に服させることです。食い詰め浪人は登場するし、なかなか大変です。でも、竹村武左衛門や品川柳次郎がなかなか役者であることがわかり、どこかユーモラスなお話です。
第4章「寒月夜鐘ヶ淵」。しょっぱなから伊豆土産のわさびが美味しそう。私はわさびの若葉のぴりっとした辛さが大好きです。寒の季節にわさびを添えた鰻の白焼き。うまそうですね~。中川淳庵を誘拐した鐘ヶ淵の隠居も、年貢の納め時でしょう。
第5章「待乳山名残宴」。神田三崎町の佐々木道場から中川淳庵に連れられて行ったところは若狭小浜藩邸。そこで藩主の忠貫に会います。速水、赤井主水正の両幕臣の中枢に加えて大藩の藩主です。これは、今後の展開に大きく影響しそうです。

などと思っていると、出ました!やっぱり思わせぶりな奈緒こと白鶴太夫の消息がからみます。でも、私には豊後関前藩の物産プロジェクトの船が出発した、という父正睦からの手紙の方がワクワクします。
結局、題名の『朔風ノ岸』は、物産プロジェクトの船とは関係がありませんでした。しかたがない、次作に期待しましょう。
それにしてもこのシリーズ、26巻もあるのですね。わーお!平岩弓枝『御宿かわせみ』シリーズを読んでいたのはいつ頃だったのかと、しばらく遠くを見るような目になりました(^o^)/
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