志情(しなさき)の海へ

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詩集『仏桑花の涙』(かわかみまさと著)を読んだ!宮古島出身の医師川上正人さんはこの時代のカオスを暗喩でほんわかに表出して~!

2022-07-03 07:23:38 | 詩、詩集
仏桑花はアカバナーとも呼ばれる。沖縄でよく見られる花である。沖縄本島では生垣としてよく植えられていた。私が住んだ川沿いの集落でも生垣として植えられていて、その花々はママゴト遊びに使われたと記憶している。

仏桑花(アカバナー)はハイビスカスの名前も持っている。こちらはハイカラなイメージだ。

小さい頃に馴染んだアカバナーは「風鈴仏桑花」で花が丸かった。よく見られるハイビスカスとは異なる。品種改良で赤だけではなくピンクや黄色、そして白いハイビスカスも昨今は見られる。懐かしい「風鈴仏桑花」をあまり見かけなくなった。川沿いにあった実家も今はなく、当時の生垣もない。旧盆に里帰りした時、周辺の数少なくなった生垣がどうなっているのか、見て回りたい。

と、まえがきが長くなった。その「仏桑花」は仏の漢字が示唆するように、後世(グショウ)の花として沖縄南部では墓に植えられるという。生垣ではなく墓である。『仏桑花の涙』のあとがきには、「宮古島では弔いの花や仏花のイメージはなく、新生の花、再生の花だ」と、解説に川上さんは書いている。正直驚いた。今まで後世花のイメージを持っていたゆえに~。最も、亜種のハイビスカスは亜熱帯の明るいイメージを放っている。

鈴木比佐雄さんの解説がとても良くて、修羅を生きる生きものに注がれる「いのちの滴」として捉えている。なるほどとうなずいた。

以前歌集『天衣無縫』を読ませていただいたが、その時に感じた医師として多くの人々の病や生死に接している臨場感からうまれる歌にハットさせられたように、詩集のⅢとⅣの章は実はオブラートに現況のいわゆるコロナパンデミック下の世界を、日常を比喩、暗喩していることに納得するものがあった。

詩人は、医師という現在地にあって、様々な暗雲、光と影、嘘と真やたくらみを体感してきたのだろうか。それらを直截に表出するわけではない。幽霊ごっこであり、水母であり、焦げついたまぼろし、壁、富士山水没、金災、飛べない折鶴、コロナ葬送、コロナ園の共食いパーティー、掟、遺体のさみしさ~。などの詩語や詩篇の中に散りばめられている。

壁の詩を一部紹介したい。

「思い込みのイデオロギーより いっそう手ごわい オソロシイ壁は デジタル言語の壁 その壁にもたれた瞬間 魂のフェルモんは 役立たずの 屁の河童に貶められ 瞬きしない仏の眼から 哀れの鱗がおちる」

詩語、詩篇から立ち上がってくるもの、鈴木比佐雄が解説で冒頭に持ってきた修羅である。しかもふるさと宮古島、そして父母と暮らした島の生活の中にもすでにして現時点を示唆する物語が潜んでいた。

「黒砂糖の鍋の海でひと泳ぎ、甘い鳴き声を発し 楚々と食われた」いなごの鳴き声を聞いた詩人がいた。成仏したイナゴをおやつとして食したのだ。長野県ではイナゴを突っ込んだソフトクリーム「バッタソフト」が有名だ。長野県出身の学生が授業でパワーポイントで紹介した時にはじめてわかった。数年前のことだが、ちょっと驚いた。

今や昆虫食によるタンパク食が推奨されている。メディアももてはやしている。イナゴのみならずコオロギの養殖もされている。 地球環境にやさしいというキャッチフレーズがついている。宮古島は先取りしていたことになる。

それは島チャビの象徴でもあった。戦後食にできるものは何でも口にした時代があった。貧しさの中で蛙も、蛇も、コウモリもカタツムリも犬猫も食べた時代があった。19世紀のフランスも同じ~。

皮肉にも時代はイナゴやコオロギをタンパク源としてお菓子類にも登場させる。猫も昆虫を食している。

「生・消・堕・流~生きづらい地球の悩み~」で「目に見えない魂の風格を訪う 真夜中の流れ星に躓く 不安と風評のひきつった 生きづらい地球のねぐら 家なき鬼の如く へたへたさ迷う」詩人の姿がある。

皮膚から下もハッキングされる時代になったと、かの歴史家ユヴァル・ノア・ハラリは警告するが彼はトランスヒューマンを示唆する。人間の身体を脳を医療対象にし、生死の判定をする医師は今や神のごとき力を有するテクノクラートの構成メンバーである。AIや遺伝子工学も医療と深く結びついている現況。

究極的な良識のありかはどの辺だろうか。生死の修羅が鮮やかに見える空間で詩人の心は引き裂かれるのだろうか。

天災、人災、そこに金災である。はじめて金災の二語を詩篇の中に見た。

時空を惑わすのは天災だろうか、人災だろうか、それとも金災だろうか。
やさしいひらがなの詩篇から現代をシャープに浮揚させる幾分毒のある詩語に驚き、その暗喩を読み解くのにいろいろ考えながら読み終えた。

かわかみまさとさま、臓腑にぐさりとくる詩集でした。



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