いのしし くん。

政治、経済から音楽全般の評論
ultimate one in the cos-mos

かげろうのシャープ。 the sharp is shimmering

2016-02-08 19:32:07 | 日記
 (1)国際的な企業の支援吸収、合併話の内幕が完全合意の前から表舞台に出てくるのもあまり聞いたことがない。液晶事業依存から脱却できずに経営不振に陥り経営再建先を模索中のシャープは、かねてから共同事業を行ってきた台湾の電子機器受託製造の世界最大手の鴻海(ホンハイ)精密工業から7000億円規模の出資を受け入れる方向で調整(報道)に入ったといわれている。

 他には国民投資(税)を資本とする産業革新機構の支援も検討対象ということだが、税活用の制約もあって出資額が3000億円(報道)程度といわれて、台湾鴻海とは歴然とした出資差がありシャープ経営再建は台湾鴻海に絞られたようにみられている。

 (2)電子機器受託製造を世界展開する台湾鴻海は、かって画期的な薄型液晶技術開発で世界のパネル、ディスプレイ産業をリードしたシャープの技術開発力に注目して、その豊富な資金力、資産を背景に早くからシャープ再建に出資の意向を示してきたが、技術の海外流出に懸念を持つシャープとは折り合わずに一時は交渉も立ち消えになっていた。

 このたびシャープが台湾に出向いての協議を行う手はずのところ、急きょ台湾鴻海の郭会長の方から日本のシャープ本社に出向いて8時間(報道)もの再建協議を行ったといわれる。

 (3)台湾鴻海のシャープ再建出資(シャープ技術開発力、ブランド獲得)にかける強い思いが伝わってくるものだった。8時間も協議が続いたということで出資支援協議は簡単には進まなかったことが予想される。

 シャープとしては自国再建によるシンボリックな国民負担(税)を活用した産業革新機構との支援協議の選択肢も残しており、ことに画期的ともいわれたシャープ液晶技術開発力の海外流出は避けたい意向が強いともいわれて、これの技術獲得でさらに世界戦略、展開を加速したい台湾鴻海の思惑とは相容れないところがある。

 (4)この日の協議を受けて台湾鴻海の郭会長が「今日は優先交渉権の合意書にサインした」(報道)と示したが、シャープ側が「そのような事実はない」(同)と即座に否定してみせて思惑の違いもあきらかとなった。

 8時間にも及ぶ協議の中では再建支援策、条件について相当多岐にわたって突っ込んだ議論が行われたわけだから、双方話としては優先交渉権や技術開発の取り扱いについて意向、確認がなされたことは間違いないので、合意書の文面以外のところでむしろ核心部分が交渉中で非公開の部分も多くあったことが想像できる。

 (5)結論を急ぐために台湾鴻海の郭会長は日本のシャープ本社に乗り込んできたわけだから、自分に都合のいい話を示して交渉をリードしたい、既成化(an accomplished fact)したい意向が「優先交渉権の合意書にサインした」発言となってあらわれたのではないのか。

 液晶パネルのシャープが7000億円の出資条件に目がくらんだわけでもあるまいが、自社再建方針協議で独自性、主張性、主導性を見失って台湾鴻海に翻弄されたシャープの芯の弱さが出た印象は強い。

 (6)交渉ごとであれこれプロセスの内部話が勝手に流出してそれを当事者がいちいち否定するということは、交渉協議の稚拙さを示すものだ。現時点で公表すべき内容につて主導的に念を押す周到さが必要であった。
 
 多分に交渉相手の台湾鴻海はシャープの本意(出資額の魅力)の足元を見越しての交渉を確実にしたい陽動作戦に打って出たとも思われる。

 (7)シャープの経営不振は余程深刻なものだろうが(シャープ自身の事業革新、改革への取り組み不足が招いたもの)、かっての画期的な技術開発力の高さで自主、自社再建に賭けることもあわせて再建方針の見直しが必要ではないのか。

 シャープを見限っての技術者の流出もあるといわれて再建時間は多くはない。このまま交渉内容を途中暴露してそれをシャープが否定してまわるという台湾鴻海との再建協議では、シャープのブランド消滅に向かうことになる公算は強い。

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