じーっ。
じーっ‥‥。
スピカ、それ、あかんのよ。
な、なんで ?
それ、「いち」ちゃんのご飯やろ ?
ウンチ固なるようにするご飯やからね。
あたしも食べたい。
あんた、便秘やないの。
そんなもん食べた日にゃあ‥‥。
食~べ~た~い~。
そない、ふぐふぐ膨らませたって。
じーっ。
じーっ‥‥。
スピカ、それ、あかんのよ。
な、なんで ?
それ、「いち」ちゃんのご飯やろ ?
ウンチ固なるようにするご飯やからね。
あたしも食べたい。
あんた、便秘やないの。
そんなもん食べた日にゃあ‥‥。
食~べ~た~い~。
そない、ふぐふぐ膨らませたって。
最近「いち」の体調が安定してる。
ご飯は相変わらずゆっくりゆっくりやけど、量はそこそこ食べてくれてる。
2年前の「いち」。
まだステロイド大量に投入してた頃。
腰骨浮き出て、ひょろひょろやった。
それが今、
写しかたの加減かもしれんけど、なんか腰のあたり、お肉戻ってきてない?
今年の夏、ステロイドからは遂に脱却したけど、ウンチはまた液状に戻ってしもてた。
獣医さんが処方してくれた乳酸菌、全然効果あれへん。
そいで、イチかバチか、ビオフェルミン細粒ゆうのをほんのちょびーっとずつ飲ませてみた。
で、ご飯はニュートロシニアに変えてみた。
何が効いたんかわからんけど、ウンチはかろうじて形出てきた。
けど、それにしてもニュートロって結構なお値段。
そこで一句。
「飯高く、猫肥ゆる冬」
まあ、ともあれあんたが楽になったんなら、それが一番。
なあ、「いち」。
すり寄って行っては、いっつもスピカに逃げられてる「いち」。
この日も猫ベッドにひとり取り残されてもた。(「片想い」)
「うっ、うっ、うっ‥‥スピカちゃんのバカ」
しばしいじける「いち」姫。
それから、
しばらくして見たら、
略奪したはずのベッドは空っぽ。
「うっ、うっ、うっ‥‥」
これまたひとりでは広すぎるキャリーに移動して、
ひたすらふて寝の「いち」でした。
孤独を愛するスピカ。
「いち」のラブコールが熱すぎて、ねぐら飛び出してしもた。(「片想い」)
「グスン。せっかく機嫌ようねんねしてたのに‥」
まあ、まあ、まあ。
「いち」はスピカちゃんとくっついてたかったんよ。
堪忍したってえな、まあ、まあ、まあ。
「えー ? 」
「いち」はな、スピカちゃんのこと大好きやねん。
そやからな、まあ、まあ、まあ。
「うーん‥」
まあ、まあ、まあ、まあ。
「ごろ゛ごろ゛ごろ゛‥‥」
スピカ大好きな「いち」。
孤独を愛するスピカ。
スピカと一緒に寝んねしたい「いち」。
丁重にお断りしたいスピカ。
そないに嫌がらんでも、スピカ。
どないしても潜り込みたい「いち」。
ついに突撃。
即、立ち上がろうとしてるスピカ。
きっちり逃げられてもた「いち」。
「あ~ぁ‥‥」
スピカが、不穏な動き。
台所で、
なんや、どしたん ?
台所に入ること自体珍しいスピカ。
おまけに、そのスピカのこんな姿勢、ひょっとして十年ぶりかもしれん。
上、なんかおんのん ?
話しかけてる私を振り向きもせんと、
もう一生懸命のスピカ。
すわ、ムカデか !
調理台周辺見回したけど、そういうおぞましいもんは見当たらん。
スピカが見上げてる先にあるんは、
畑から採って来たイチジクと、味噌汁用にお椀の中に準備した大根葉と、
それから柿酢。
柿酢か ?
仕込んでからもう一月以上たつから、そろそろ出来上がってもええ頃やねんけど。
香りがまだやらかいというか、ツンとしてないから、
まだかもしれんと勝手に思てるだけかもしれん。
そうゆうたら、一週間ほど前から急に、瓶の口付近にコバエ御一行様が遊びに来てはる。
柿酢のおいしい香り、上がってきてんのかなあ。
一番先に気づいたんがコバエで、
その次がスピカ ?
あんたたち、どっちも柿酢好きなん ?
あれは台風‥‥10号やったかしらん。
「過去最強クラス」とか、「想像を超える被害の可能性も」とか、
気象庁がものすごくピリピリしてた台風。
もし避難せなあかんようになった場合のために、
プラスチックの猫キャリーをもう一個買い足しとこかな。
「いち」は、いつも通院に使こてる、扉をガムテープで止めるキャリーでもなんとか大丈夫やろうけど、
それに、「いち」は普段のベッド代わりにこのキャリー使こてるし。
ただ、力の強いスピカはなあ。
うちで他にあるのは前抱えのリュック型と、猫カート。
どっちも猫が入るとこは布製。
頑丈なやつひとつ、買うといた方がええな。
ゆうんで、ネットで注文したんです、新しいキャリー。
私の頭の中では、スピカ用に。
で、
幸いなことにスピカは気に入って出入りしてくれるんやけど、
スピカよりもっとこの新しいキャリーをお気に召したのが、
「いち」姫さま。
「いち」ちゃん、いつものキャリーではあかん?
あんたにはこれ、ちょっと大きすぎへんか?
ほら、スカスカで寒そうやけどな。
言うても「いち」姫さま、聞きやしません。
隙見てスピカが入って寝てても、「いち」姫さま、ぐりぐりぐりって頭から割り込んで行って、スピカを放り出してしまいよります。
かつて「いち」姫さまのベッドとなっていた古いキャリーは、
かくして空き家状態となっているきょうこの頃であります。
スピカが、
椅子に座ってる私の膝に、しょっちゅうよじ登ろとする。
この子は手足痛いから自分では登られへん。
しゃあない、抱き上げて膝に乗せたるんやけど、
ずり落ちんように抱えといたらんとあかんし、
ちょこちょこ立ち上がることもでけへん。
猫たちにはもう、寒いんやろなあ。
ゆうんで、今シーズン初めてストーブつけた。
早速集まってくるお二人さん。
「やっと、つけよりましたなあ」
「ほんま、よろしおしたなあ」
「いち」の通院用に使こうてるキャリー。
満身創痍で、前扉の鍵がぶっ壊れ、ガムテープ貼り付けて閉めてる。
体重1.8キロの「いち」には、これで十分効果ある。
実を言うと、後ろ扉はもっと悲惨な状態。
鍵なんか、もう10年以上前に吹っ飛んでしもて、
ぎっちり布テープで固定したある。
哀れなケージやけど、今は「いち」しか使こてないから、まあなんとかこれでもたしてる。
昔々、スピカも一緒に通院してた時は、もう一個大きめのケージも使こてた。
それなんか、鍵壊れるどころか、扉割れてもて、ちぎれてもて、
ただのプラスチックかまくら。
なんでこんなことになったんか?
なんでて、
なんでて、
それはですねえ‥‥。
この、
この、
誰かさんの若かりし日のおつむが、
キョーレツ頭突きをくらわし続けた結果、
でございますのですよ。
ねえ、スピカ。
「き、記憶にございません‥‥」
スピカは手ぇ短い。
足も短い。
体全体とのバランスが、なんか「いち」と違う。
その短いお手々を更に短こう折り曲げて、
短かぶっといあんよを、
よっこらしょ
無理矢理ベッド枠の上に載せて、
誇らしげに寝るスピカさんの秋です。
肌寒うなったり、意外と蒸し暑かったり。
人間は、着たり脱いだり、着るもん変えたり。
ほんなら着たきり雀の猫様達はどうするか。
「いち」のバヤイ、
最近使用頻度の低い通院用キャリーにお籠りしたり、
かと思たら、雨で天日干しでけへん布団の陰に隠れたり、
脱がれへん、ゆうのは大変なんやなあ、「いち」。
猫かじーっと一点を見つめてる。
そんな時、猫の同居人はギクッとする。
その視線の先には、
虫か、
それともわれわれ人間の目ぇには見えへん
何かが‥‥。
今日も今日とて、スピカが、
「じーっ」
な、なにが‥‥
慌ててスピカの後ろに回り込んで、
その視線の先を追うてみたら、
い、岩合さんのアレやった。
びっくりしたがな、スピカ。
孤独を愛する猫、スピカ。
おまけに、暑いのが苦手。
居間でひとり寛いでたら、
おんぶ寝大好きな「いち」が来て、
すぐにこうなる。
「ひとりがええねん ! 暑苦しいのいややねん !」
ということで、
最近スピカはもっぱら別荘通い。
朝ごはん済んだら、倉庫として使こうてる母屋にお出かけ。
積み上げてる雑誌やパンフ類の山にもたれ、
一人静かな夏を満喫されるのです。
スピカちゃんの分、あけて待ってるのにな、
残念やな、「いち」。
自作の猫ベッド、
スピカにはちょうどええ大きさやと思てたんやけど、
最近なんやら、そっくり返って寝るようになった。
ぎゅううって、サイドに肩のあたり押し付けて、
どんどん進出していって、
あれれれれぇ、
「いち」もびっくり。
うーん、もちょっとでかいの作ったらなあかんか ?