カトリックの座禅道場・神冥窟は秋川渓谷の中にあるが、かつて地元の老人が、
「歳をとった方は なかなかだが 若いのはまあまあかな」
「歳をとった方」というのは愛宮神父、「若い方」は中年の神父、遠目なのに、よくわかったものだ。
昔の日本人はカンが良かった、一目で本質を見抜く、秋川の森林の中で生活しているこの老人、たいした学校を出ているはずもないのに、どうして、これほどの眼力を持っていたのか、
「正直の頭(こうべ)に 神宿る」
そして、これに強い影響をあたえたものが仏教、
「一切 有為(うい)の法は 泡のごとく 影のごとく 夢のごとく 虹のごとし」
「よろしく この観(かん)を為すべし」
この列島の人々の原始的心性をブラッシュ・アップしランク・アップしたものが、大乗仏教の論理だったのではあるまいか。