二銭銅貨

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早春

2007-03-13 | 邦画
早春  ☆☆
1956.01.29 松竹、白黒、普通サイズ
監督・脚本:小津安二郎、脚本:野田高梧
出演:淡島千景、池辺良、岸恵子、高橋貞二

都会のサラリーマンのやるせなさ、
ビルの谷間のよそよそしさ、
組織の他人行儀、
社会の無常。

「金魚」と呼ばれる岸恵子は、本当に金魚みたいで、悪女。
池辺良を誘惑します。
煮ても焼いても喰えない金魚。

ビシッとしっかりしている淡島千景。
じっと見つめる目線は鋭く、
夫のゆらゆらを逃すはずも無く、許すはずも無く、
きっぱりとして、さっぱりとしている。
いつもの能天気な淡島さんでは無く、
「夫婦善哉」の時と同じように、
すっきりした芝居です。
しっかりと、映画に1本、筋を入れてます。

夫婦の間の犬も喰わない喧嘩をネタに、
時代や社会や人生を、
そのままフィルムに静かに焼き付けています。
主演の2人の緊張感のある芝居からか、
幾分、厳しい、重い感じがします。

池辺良のトークショウ付き:
本の出版記念だそうで、元気な姿で登場し昔の思い出を語った。杉葉子と始めて会った時の印象は、「体格の良い大きな女だなあ」だったそうです。青い山脈の撮影で、ロケハンのとても寒い時期、泳げない杉さんに海で水泳を教えたそうです。小津さんの思い出についても語りました。東宝の専属だった池辺さんが松竹に出るのは通常は有り得ないことです。本部長が池辺さんに、つい本音を漏らしたんだそうですが、「東宝で是非1本撮って欲しいと言っているのに首を縦に振らない小津さんに東宝で撮らせる作戦で、池辺さんを小津さんに請われるまま早春に出した」と言うことです。最初の大船での本読みで、セリフ覚えの悪い池辺さんが「良べえ、台本を一字一句間違えたらゆるさんぞ」と小津さんに言われコチコチに緊張しまくった話。タバコの箱をクルクル回すシーンでNGが出まくった話。実はこれ、小津さんが池辺さんの顔に深刻さが少ないため、NGを出しまくって脅かす策略だったという話など。興味深い話が多くあった。
07.03.03 新文芸座
コメント
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