二銭銅貨

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ラ・チェネレントラ/MET08-09舞台撮影

2009-05-31 | オペラ
ラ・チェネレントラ/MET08-09舞台撮影

作曲:ロッシーニ、演出:チェーザレ・リエーヴィ
指揮:マウリツィオ・ベニーニ
出演:エリーナ・ガランチャ、ローレンス・ブラウンリー、
   シモーネ・アルベルギーニ、アレッサンドロ・コルベッリ、
   ジョン・レリエ、
   ラシェル・ダーキン、パトリシア・リズリー

シンデレラの2人姉妹の父親役のアレッサンドロ・コルベッリは舞台の上下左右を所狭しと動き回り、喜劇の種を舞台全域に振り撒き散らす。背が低いのに大きな芝居、年寄りなのに動きの切れが良く、身振り、姿勢、表情がしっかりと極まる。芸の職人。歌の職人。歌ももちろん良く、オペラ歌手なんだろうか、喜劇役者なんだろうかと思う。酔っ払って歌うところがうまい。1人芝居で歌うところもうまい。

こうした滑稽な人物を蔑んで観ることもできるけれど、また一方で、これを自分に引き当てて、自分にもこうした滑稽さが、その何十%かはあるんじゃないかと思ったりする。そう思うとあまり蔑む気にもならないし、むしろ愛着を感じるほどだ。だからこの父親の悪行を許してくれたエリーナ・ガランチャが有難い、感謝の気持ちがわき起こる。白無垢のすそ広がりのウェディング・ドレスのシンデレラに。

このドラマの主人公はシンデレラだけれども、大人向けにはこの父親も主役だ。

ラシェル・ダーキン、パトリシア・リズリーの2人姉妹が父親に良く合わせていて面白い。ポーズやしぐさや表情にキレがあって、父親と共にこの芝居の中核をなしていたと思う。

王子様に化ける召使役のシモーネ・アルベルギーニは柔らかい感じの喜劇芝居で、またもう1人の滑稽な人物を演じていた。狂言回しと脇役を兼ねていて、演劇全体のコントローラの役割も果たしている。

ガランチャの声は深く透明で、混じりけのないメゾ。透き通る秋の空のずっと向こうの奥深くのようだ。水色のキラキラしたすそ広がりウェディング・ドレスが良く似合う。

王子様役はローレンス・ブラウンリー。背が低いのがハンデだが、怒りまくったりする場面での迫力がある。

ジョン・レリエは深い深いバス。落ち着きはらっている。幕間のインタビューを聞いていると、とても真面目そうな発言をしていて、面白そうな人だと思った。

演出はディズニー・アニメのような印象をパロディー化したもので、人物の動きにはアニメのカートゥーンのようなスラップステッィクな感じのものが多い。また、小柄なブラウンリーにミッキーマウスのような印象を与えようとしていたようにも、若干感じた。

ロッシーニの音楽はウキウキと忙しくアチコチ飛び回っていて、聴いているこちらの血行が良くなる。元気が出る。

09.05.30 東劇
コメント
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