二銭銅貨

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トスカ/MET09-10舞台撮影

2009-11-03 | オペラ
トスカ/MET09-10舞台撮影

作曲:プッチーニ、演出:リュック・ボンデイ
指揮:ジョゼフ・コラネリ
出演:カリタ・マッティラ、マルセロ・アルバレス
   ジョージ・ギャグニッザ

ぬめぬめとして、冷徹なワニのような風貌のスカルピアはジョージ・ギャグニッザで、マジで気持ち悪い。スーパー・エロ・オヤジだ。悪辣で冷酷で残酷。あんな奴は刺し殺すしか無いだろう。のどに血を詰まらせて死ぬしかないだろうと思わせるジョージ・ギャグニッザの芝居が素晴らしい。ワニ皮の服が、その爬虫類的な気持ち悪さに良く似合う。

対するトスカはマッティラ。真っ赤なドレスで強い所を見せる。ライオンだ。ワニなんかに負けていない。強い。強い。すっきりする。スーパーマンみたいに強い。ちょっとうれしい。

ジョージ・ギャグニッザの死にざまもきれいだ。

マッティラの歌は強くて美しい。赤の衣装が美しく、「歌に生き、愛に生き」のせっぱ詰まった悲しみの歌に、強さと誠実さをこめる。これは控えめでひたむきな気持ちのアリアだけれども、その後の出来事の序曲でもあって、赤い芯のある歌である。

マルセロ・アルバレスのテノールは誠実で力強く情熱的。

幕間のインタビューで演出のリュック・ボンデイが「これは”痛み”の物語だ」と言っていたのが印象的だった。確かにそんな感じだった。

この演出は新プロダクションで、今年のオープニング・ガラでブーイングが出たことで話題になったものだ。新聞でも取り上げられたほど。前のプロダクションがゼフィレッリのもので、20数年続いたものだったこともあって、多分だいぶ雰囲気の異なる豪華絢爛な前プロダクションとの比較の意味でのブーイングであったのだろう。ゼフィレッリのものは知らないので、本作に特に悪い印象は受けなかった。むしろ歌手たちの芝居は素晴らしく良いと感じた。

09.10.31 東劇
コメント
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