ダナエの愛/東京文化会館(二期会)2015
作曲:リヒャルト・シュトラウス 、指揮:準・メルクル
演出:深作健太、演奏:東京フィル
装置:松井るみ、衣裳:前田文子
出演:ダナエ:林正子、ミダス:福井敬、ユピテル:小森輝彦
ポルクス:村上公太、メルクール:児玉和弘
クサンテ:平井香織
ゼメレ:山口清子、オイローパ:澤村翔子
アルクメーネ:磯地美樹、レダ:与田朝子
福井は全力で歌って美しく清涼な感じの声をホールいっぱいに響かせた。こうしたワーグナーっぽいオペラに合う声だと思った。小森のユピテルは美女に囲まれてデレデレするやや下品な感じの神様だったが、悪辣な感じの場面ではその声と合わせて、実はとんでもない大悪党の迫力を見せていた。福井との重唱に迫力があり、聴きごたえのある公演となった。林は声量のある美しいソプラノで安定している。4人の王女のアンサンブルが良く引き締まっていて、この人たちがこのオペラでは重要だと感じた。ちょうど魔笛の3人の侍女の役割だ。
オペラの前半は合唱が多用されるが、舞台装置の横壁と天井に密閉された空間のせいなのか。かなりの迫力を感じた。ユピテルの登場シーンでは天井と壁の間に隙間が出来て、そこから階段が突き出て来るサプライズのある演出だった。最後は破壊された街をイメージした美術となって、防護服のメルクールがガイガーカウンターを持って出て来るので核兵器の使用を想像させる。その後、メルクールは医者の扮装に変わる。これは年老いたユピテルの主治医のイメージ。破壊された都市の上空に常にうっすらとスモークがあって、そこにかすかに照明をあてて不穏な雰囲気を出していた。最後にミダスが野菜を入れたリュックを担いで帰って来るところは戦後の買い出しを連想させるものだった。
「金」と「愛」の対立関係を題材にしたものだが、年老いたユピテルを通して、老人問題もテーマにしていたようだ。「若者」と「年寄」の関係。何も言わずに消え去る年老いたユピテルが印象的だった。
衣装では4人の王女のものが面白かった。頭髪が茶色のキノコの傘のようになっていて、縦の波模様の茶色のズンドウのワンピースだ。楽しい衣装が鮮烈だった。
演奏はしっかりとしていて、分厚さを感じる迫力のある音だった。
15.10.04 東京文化会館
作曲:リヒャルト・シュトラウス 、指揮:準・メルクル
演出:深作健太、演奏:東京フィル
装置:松井るみ、衣裳:前田文子
出演:ダナエ:林正子、ミダス:福井敬、ユピテル:小森輝彦
ポルクス:村上公太、メルクール:児玉和弘
クサンテ:平井香織
ゼメレ:山口清子、オイローパ:澤村翔子
アルクメーネ:磯地美樹、レダ:与田朝子
福井は全力で歌って美しく清涼な感じの声をホールいっぱいに響かせた。こうしたワーグナーっぽいオペラに合う声だと思った。小森のユピテルは美女に囲まれてデレデレするやや下品な感じの神様だったが、悪辣な感じの場面ではその声と合わせて、実はとんでもない大悪党の迫力を見せていた。福井との重唱に迫力があり、聴きごたえのある公演となった。林は声量のある美しいソプラノで安定している。4人の王女のアンサンブルが良く引き締まっていて、この人たちがこのオペラでは重要だと感じた。ちょうど魔笛の3人の侍女の役割だ。
オペラの前半は合唱が多用されるが、舞台装置の横壁と天井に密閉された空間のせいなのか。かなりの迫力を感じた。ユピテルの登場シーンでは天井と壁の間に隙間が出来て、そこから階段が突き出て来るサプライズのある演出だった。最後は破壊された街をイメージした美術となって、防護服のメルクールがガイガーカウンターを持って出て来るので核兵器の使用を想像させる。その後、メルクールは医者の扮装に変わる。これは年老いたユピテルの主治医のイメージ。破壊された都市の上空に常にうっすらとスモークがあって、そこにかすかに照明をあてて不穏な雰囲気を出していた。最後にミダスが野菜を入れたリュックを担いで帰って来るところは戦後の買い出しを連想させるものだった。
「金」と「愛」の対立関係を題材にしたものだが、年老いたユピテルを通して、老人問題もテーマにしていたようだ。「若者」と「年寄」の関係。何も言わずに消え去る年老いたユピテルが印象的だった。
衣装では4人の王女のものが面白かった。頭髪が茶色のキノコの傘のようになっていて、縦の波模様の茶色のズンドウのワンピースだ。楽しい衣装が鮮烈だった。
演奏はしっかりとしていて、分厚さを感じる迫力のある音だった。
15.10.04 東京文化会館