二銭銅貨

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春琴抄/お琴と佐助

2009-12-18 | 邦画
春琴抄/お琴と佐助 ☆☆
1935.06.15 松竹、白黒、普通サイズ
監督・脚本:島津保次郎、原作:谷崎潤一郎
出演:田中絹代、高田浩吉、斎藤達雄

盲目のお琴はきつい、厳しい。
芸の求道者で琴の達人だ。
豪商の娘で障害者で、
それですこし、すねた所がある。
唇をかむような、
目明きがねたましい気持ち。
美貌が何になる。芸が何になる。
そんなお琴を支えるのが丁稚の佐助だ。
献身的で自己犠牲をいとわない。

お琴の和服姿は凛々しく燦然としている。
その琴の音は細やかで毅然としている。
でも、愛に飢えているのだ。
美貌に引き寄せられてくる斎藤達雄のような男は居るのだが、
そんな安っぽい男は相手にしない。
友人は芸だけ。
恋人は琴だけ。

佐助は丁稚。
お琴の眼となり、いつも手を引いて歩いている。
お琴は彼のことは単なる使用人だと思っている。
深く恋していることは、
自分も知っているのか知らないのか。

佐助はお琴を慕っている。
お琴はお姫さま、自分は丁稚。
恋愛感情なんてもってのほか。
けれど自分がお琴を恋していることを、
自分自身で分かっているのかいないのか。

かすかに自虐的なこの恋の物語は、
いかにも谷崎潤一郎の文学らしい。

映画にはお琴が子供を生むエピソードがある。これについては父親が明らかにされず、他のエピソードとのつながりも無く、何を意図したエピソードなのかも分からない。特に無くても良いようなこのエピソードが何故有るのか一寸不思議に思った。父親が誰なのか気になるところだが、特に示唆的な所も証拠も見当たらない。しかしながら若干それらしい感じの所があって、佐助を父親と見るのが妥当だと思った。そうだとすればこのエピソードには重大な意味が、この恋愛の深い屈折率の表現が現れて来る。この恋のねじれた感じ、秘め事めいた印象だ。原作は読んでいないので良く知らないが、そちらでは佐助の子であるように書かれているらしい。

09.11.28 東劇

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