かなり期間を置いてしまいましたが続きます。
さて、衣と食の賜わりを神に感謝する儀式??がアイヌにはあります。その名は「イオマンテ」。「イオマンテ」とは「それを行かせる。それを送る」。つまり「神を行かせる。神を送る」と言う意味になります。
これは儀式と言って良いのか今一つ自信がありませんが、アイヌの神々に対する解釈と言えます。
このまま話を進めても分からないと思うので、一応私の尺度でイオマンテを簡単に解説したいと思います。
まず天上界に神がいます。人間と同じ姿をしています。その神が「どぉーれ、地上の人間どもに衣類と食い物を恵んでやりに行ってくっかな」とか言いながら熊に変身します。そして地上に熊の姿で降臨。
アイヌ人達はその熊を見て、「神様が毛皮と肉を持ってきて下さった、ありがたゃー、ありがたゃー」と感謝。感謝の気持ちで熊を殺し解体し、毛皮と肉を取り分けます。その行為が「イオマンテ」です。
イオマンテでは神である熊に酒や団子、そして日本最大の淡水魚であるイトウをお供えします。解体された熊にです。「また毛皮とお肉を持ってきてねぇー」との願いを込めてのお供えです。神を歓迎し気持ちよく天界にお帰りいただく儀式と言えます。
死んでからイオマンテをしても遅いのではないかとお思いでしょうが、アイヌでは熊を殺しても魂は両耳の中に宿っていると考えているようで、殺した後にイオマンテをしても大丈夫みたいです。
因みに「イオマンテ」する動物は島フクロウでも鯱でもやるみたいですか、一般的には熊だそうです。熊をアイヌ語では「ヌプリコロカムイ(山を支配する神)」、「キムンカムイ(山の神)」と言います。「熊=山神」です。だから熊がメインなのだと思います。。
更に因みに鹿は神じゃなく、神の家畜的に捉えられているようで、鹿を狩ってもイオマンテはしないみたいです。
このイオマンテですが男たちが熊を殺し、肉と毛皮を取り分け、女たちは酒等のお供え物を準備します。
この儀式ですが、どことなく三途の川の奪衣婆と懸衣爺に似ていると思えませんか。
死者の衣類を剥ぐ行為と熊の毛皮を剥ぐ行為。そして三途の川を渡らせる行為と天界に戻っていただく行為。私は同じ系統の考え方の様に思います。
イオマンテは1955年に道知事から「野蛮な行為」として禁止。その後、2007年に再開しています。途切れはしましたが現在も続いている儀式です。
これ、大昔はどうだったでしょうか。神道的な考えで血は穢れとされています。女性は山を登るべからずとされたのも経血が忌み嫌われたからです。西洋のように動物の血をデミグラスソースにする文化はアイヌにも日本にもありません。
「鯉の生き血はどうなのだ」と言われれば一言もありませんが、動物の血は忌み嫌われていたのは確かです。
だとしたらどうするか。私の住む仙台市には江戸時代、広瀬川、七北田川に処刑場がありました。私、思うのですが、これは穢れである血を洗い流していた名残で川の側を処刑場としたのではないでしょうか。
そしてイオマンテでも血が流れる。毛皮を剥いだ時に流れる。故に古来のイオマンテは川で行っていたと思うのです。
瀬織津姫のアイヌ語訳は「毛皮を剥いで背負って入る姫」と取れます。これは若しかしたら古来、イオマンテの儀式を行っていた女性が神格化され瀬織津姫が誕生したのではないでしょうか。
瀬織津姫と同神とされる禍津日神は悪魔とされる。奪衣婆は地獄の悪鬼の如く描かれている。イオマンテはの儀式。西洋でも東洋でも人は下賎な者がやる仕事です。
しかしアイヌでは神を祀り上げる儀式であります。イオマンテを行う人物は古来はシャーマン。いや巫女だと言えます。
その巫女を大陸から渡って来た者たちは悪魔の所業と見る。下賎な者だと思う。仏教から見たら日本の地主神は異教の神だから、より悪神に思えるのではないでしょうか。
瀬織津姫は「姥」だとする説があります。姥と言えばおどろおどろしいイメージですが、姥は本来「最初の巫女」を意味します。その点からもイオマンテの儀式を行っていた女性のように思うのです。
神道には衣食住の神々がいます。五穀豊穣を神に感謝する信仰があります。それはイオマンテに通じるものがあると思います。
以上、私が瀬織津姫が人間だったとして考えた瀬織津姫の源流です。
まぁーこんな事考えても真実かどうかは誰にも分かりません。異論反論がある方々は大勢いらっしゃるとは思いますが、シャーマンである巫女が神格化されたケースは多々あります。可能性はゼロといえない筈。これも一つの解答であるとして書いてみました。
あっ、そうそう忘れてました。15メートルの熊が熊野権現とされた理由を。
アイヌ語って日本語の根源の一部になっているのは間違いないと思います。そして日本の神道にもアイヌの考えが残っている。
熊は冬眠する。それが蘇りとされた。天界と地上を行き来する動物と考えられた。そこにイオマンテを重ねれば、撃ち取られた理由になるのではないでしょうか。
チョット苦しいけど。
ではでは。