前回、「認知症の父を騙そうとしてた男が、認知症になって商売を廃業していた」と題して記事を書きましたが、実は今回の出来事から想い出して書いたものです。
先日、家に郵便物が届いており、土地家屋調査士から「境界線の立ち合いをお願いします。ハンコも一緒にお持ちください」と書いてあったのです。
私は怒りに震えました。「何を身勝手なことを」と。
時は約20年前、私、自分の店舗で秘密の商売をしていました。
そこに斜め裏の家の方が家を売ると言う事で、裏道の共同の土地を調査しに来たのです。その共同の土地は七軒に面しています。物件の所有者全員が確認に来ていました。
私は話を聞いていなかったのですが、隣のアパートとは段差がある。そこが境界線。それを確認すれば良いのだと思っておりました。
土地家屋調査士は父と娘の二人。二人で境界線を測量しています。そしたら娘の土地家屋調査士が怪訝そうな顔をして、父親に話しかけます。父親は小声で「黙っていろ」と話した。私は聞き逃さなかった。
何かが変だ。何かトラブルが発生したみたいだ。土地家屋調査士は私をチラチラと見ている。私の家に問題があるのではないか。私は勘だけは鋭い。何かあると思い私の父親に電話した。
私の父は言った。「うちの土地が削られて隣のアパートの敷地になっている」と。私は初耳だった。父はその事実を誰にも語っていなかった。
父はアパートの所有者にその話をしていたが、聞き耳持たずにそのままになっていた。それで削られた土地に父は物件を建てた。父は裁判の知識はないし、性格は内弁慶。心が弱い男だった。
私は免許持っていないが、宅建士の勉強をチョットだけしていた。そこで電話を切り、土地家屋調査士と多くの物件所有者の前で、隣のアパート所有者に向かって話しかけた。
「うちの土地、そちらのアパートに取られているそうですね」と。
それだけ言ってもダメだ。それで続けて言った。「私の父は何度も話をしに行っているそうですが、話を聞かないそうですね」と。
私は知っていた。20年間、他人の土地を占領し、その件で異議申し立てがなければ自分の土地に出来る事を。
隣のアパート所有者は高齢の女性だった。私は強い口調で言った。「うちの土地を占領している自覚はあるんでしょ」と。
続けざまに父親の方の土地家屋調査士に聞いた。「うちの土地、確実に取られていますよね」と。土地家屋調査士は少々怯えた表情で認めた。
土地家屋調査士としては厄介な仕事をとなる。私が気が付かなければ、そのまま誤魔化す気でいたみたいだ。だから娘の土地家屋調査士を叱責したのだと思う。これだから不動産関係者は油断が出来ない。
続く。