令和4年8月14日
「地球上最悪」侵略的水草と住民の終わりなき戦い
驚異的な生命力、切られた茎や根から新たな芽が…
「ナガエツルノゲイトウ」
ため池の真ん中に、巨大な緑色の塊が浮かぶ。
こんもりと、まるで島のように見えるが、その正体は水面に生い茂った水草。
「地球上最悪の侵略的植物」と呼ばれ、栽培や輸入などが規制される特定外来生物、ナガエツルノゲイトウだ。
淡路島や東播磨地域などの兵庫県南西部で近年、深刻な分布拡大が続いている。
南米原産で、英名はアリゲーターウィード。
水草なのに乾燥に強く、水陸両生。
水辺では41日間で倍増するとの報告があり、放っておけばたちまち水面を覆ってしまう。
在来の水生植物を追いやる恐れがあるほか、水田に入れば稲の生育を妨げ、農業被害につながる。
風や水流で茎が切れれば塊のまま流され、水利施設を詰まらせて水害を引き起こす恐れもある。
県南西部では2016年以降、神戸市西区や稲美、播磨両町、明石、加古川、洲本の各市で見つかり、
河川やため池の環境保全に取り組む市民グループ「兵庫・水辺ネットワーク」(神戸市)が行政や地元住民と共に駆除を続ける。
その闘いは困難を極める。
切れた茎や根の断片からも、新たな芽を出して増殖する生命力を持つからだ。
手作業では、深さ50センチにもなる根を切らずに取り除くことはできない。
あるときは農業用エンジンポンプと消防用ホースによる放水で掘削して回収し、またあるときは遮光率100%のシートで覆って1年半もかけて死滅させる。
根付いた土砂ごと重機で掘り返し、積み上げて埋めることもある。ただ、稲美町の新仏池では、その荒野のような土壌からも次々に再生してしまった。
「ナガエに比べれば、他はかわいいものだった」と同ネットワーク事務局の大嶋範行さん(70)はため息交じりに言う。
驚異的なしぶとさを前に、途方もない闘いが続く。
■尼崎で国内初確認 現在は21府県に
ナガエツルノゲイトウ(以下、ナガエ)は北米、アジア、オセアニア、アフリカの各地で問題になっている。
日本では1989年、初めて尼崎市で定着が確認された。
国立環境研究所の侵入生物データベースによると、現在は茨城県以西の21府県に広がっている。
兵庫県内では伊丹市の昆陽池のオニバスや、稲美町の天満大池のアサザといった希少植物が脅かされる。
なぜ各地に広がるのか。
県南西部などでナガエの防除活動を続ける「兵庫・水辺ネットワーク」(神戸市)メンバーの丸井英幹さん(54)は
「日本に入り込んだナガエは、花は咲いても種はできないため、鳥が運ぶことは考えにくい」と話す。
これまで見つかっている場所はいずれも近くまで車で行けるなどアクセスしやすい共通点があり、人が媒介している可能性も指摘されている。
環境省は2005年にナガエを特定外来生物に指定。研究目的以外での栽培や保管、運搬、放逐が禁じられ、
違反すれば個人で300万円以下、法人で1億円以下の罰金が科せられる。
「ナガエツルノゲイトウ」
ナガエツルノゲイトウ 駆除マニュアル(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/nousin/kankyo/kankyo_hozen/attach/pdf/nagae-14.pdf
上記資料を見る限り、岡山県での広がりは確認できてないようですが、
県民の力で、排除するよう心掛けなければならない。
近年では、オオキンケイギクの繁殖が拡大している。