週末にビックニュースが飛び込んできた。
あのモハメッド・アリが亡くなった。これがビックニュースでなくて、なんなのだと言いたい。でも、もう過去の人なのだろうか、日本ではあまり世間は騒いでいない。
一人のスポーツ選手に過ぎないが、これほど世界に影響を与えたスポーツ選手は滅多にいない。そのことが、今はあまり理解されないことが無性に寂しい。
たかがスポーツ選手が、国家の意向に反旗を魔キことが、どれほどの重圧なのか、想像して欲しい。私が十代前半、モハメッド・アリには威光が射してみえるほどの輝きがあった。
オリンピックで金メダルをとったものの、肌の色を理由にレストランの入店を断れれて、金メダルを河に投げ捨てた。「ヴェトコンは俺を差別していない」と言って、徴兵を断り罰則を受けた。
スポーツ選手としての全盛期を、これで棒に振ったとされる。もし徴兵に応じていれば、彼は優遇されて短期間で帰国し、プロボクサーとして前代未聞の記録を打ち立てたであろう。しかし、アメリカの横暴に、足元で反旗を魔オたこの黒人ボクサーは、世界中で欧米の搾取に苦しむ人々の希望の星であった。
私は十代の前半を、共産主義を信奉する青年たちと接して過ごしたので、モハメッド・アリの名前は、ほぼ神格化に等しい重みがある。彼は銃器を手にして戦ったのではない。また言論により正義を主張したのではない。
神が与えし最も優れた才能を犠牲にして、己の正義を貫いた。ボクサーとしてアリ以上の選手は、これからも出てくるだろうし、その記録も塗り替えられるであろう。しかし、彼の行いは、その記録以上に、人々の記憶に残るはずだ。
謹んでお悔やみを申し上げます。