白泉社という出版社から刊行されている漫画雑誌に「ヤングアニマル」がある。
元は集英社の週刊ジャンプの編集経験者が中心となって立ち上げた雑誌だけに、ジャンプの青年誌版であり、かつヤングジャンプでは掲載されないようなマイナーな分野を得意としている。
代表作はダークファンタジーの未完の傑作「ベルセルク」であり、リアル・ストリート喧嘩漫画といわれた「ホーリーランド」、童貞青年たちのバイブルと云われた「ふたりエッチ」なんかが有名だ。
そんな作品に混じって、突出して浮いた絵柄だったのが、ももせたまみの出世作「ももいろシスターズ」であった。H系四コマ漫画の金字塔である。女性の漫画家が主に下ネタを扱った四コマ漫画ならば、原律子が有名だが、ももせの漫画はあまりに可愛すぎた。
おそらく作者の人柄が反映されているのだと思うが、下ネタは下品でなく、下種でもなく、下劣さからも遠いい。むしろ朗らかであり、思わず笑ってしまう長閑な作風であった。そのせいで、ヤングアニマル誌では浮いていたが、そのわりに根強い人気があった。断言するが、ももせたまみの漫画で欲情する読者は、まずあり得ない。でもその作風は下ネタのオンパレードである。そこが面白かった。
作者はOLとの二足草鞋で漫画業を3年ほどこなし、その後は漫画に専念し、竹書房では漫画ライフMOMOという、ももせたまみがメインを張る漫画雑誌まで出るほどに活躍していた。
だが近年は作品の数が減っていたが、それは彼女が結婚、出産したからに他ならない。しかも、最初のお子さんは双子である。二卵性の双子であるため個性が別々の双子である。
そんな育児経験をエッセイ漫画風にまとめたのが表題の作品だ。もちろん、ももせの漫画である。当然に下ネタのオンパレードなのだが、その絵柄の可愛らしさから全くイヤラシクない。
それどころか双子育児の大変ささえ上手く押し隠されている。いや、マジで大変だったはずです。それを可愛らしい双子の、愛くるしい振る舞いで押し隠してしまう。作者は穏やかな人柄だと思うが、相当に芯の強い人だとも思う。
実を云えば、独身で一人暮らしの長い私にとって育児漫画は未知の世界であり、異世界そのものである。でも、幼子の育児が相当に大変であることぐらいは知っている。子供に不慣れな私にとっては、ある意味怖い世界でもある。
もちろん我が子を育てる楽しみもあるとは思う。実際、子供の写真を携帯の待ち受けにして、砂漠のオアシスのように大事にしているパパさんを幾人も知っている。でも、パパさん以上にママさんは大変だと思うな。
その大変さを感じさせずに、のどかなシモネタで四コマ漫画を描き出すももせたまみには感心します。男女を問わず、一度は目に通して欲しいとも思っているんですよ。