ヌマンタの書斎

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ハンカチ王子の限界

2022-08-15 09:40:24 | スポーツ
自分で壁を作って才能を伸ばすことを拒否した男、それが2021年に日本ハムファイターズを引退した斉藤祐樹に対する私の印象だ。

ご存じの通り、高校野球の甲子園大会で活躍し、「ハンカチ王子」と呼ばれた人気投手である。残念ながらプロ野球では、たいした活躍が出来ずに引退した。出身である群馬県太田市に会社を持ち、今後は実業家として頑張る予定だそうだ。

私は仕事柄、群馬県に通っているが、現地の経営者の間でもけっこう話題になっているらしい。もっとも、どちらかといえば私は少々懐疑的である。

プロ野球で成功したとは言い難い人が、社会人として復活することは珍しくない。才能には向き不向きはあるが、家庭を背負い、従業員に責任を持つようになった見違えた元プロ野球選手は少なくない。

だが、斉藤祐樹に関しては、いささか心もとない。プロ野球選手として伸びなかった原因が、彼自身にあると考えているからだ。

割と忘れられがちだが、彼は六大学野球でも大きな実績を残している。名門早稲田大学野球部に久々の黄金時代をもたらした主力選手であった。一年の頃からベストナイン選出など大きな功績を残している。間違いなく指折りの名選手であった。

だからこそ、プロ野球での失敗が目立つ。実はマスコミが積極的に報じないだけで、一年目から不安はあった。たしか落合だったと思うが、マスコミに斉藤選手の印象を訊かれて一言「走り込み不足」である。

実際、前半戦こそ先発投手として、そこそこの成績を残しているが、後半戦の失速は明らかであった。下半身のよろけた投手なんて木偶の坊である。とはいえ、彼は屈指の人気投手であり、球団にとっても、またマスコミにとっても貴重な選手であった。

だからこそ、彼への不評、悪評はなかなか表に出なかった。実は当時からコーチ陣からの不満が多く出ていたのだが、これらは公表されなかった。球団屈指の人気者を貶めるのは本意ではないし、プロ野球全体にとっても大切な選手であったからだ。

だが、ダルビッシュ有との不仲、イチローの酷評、吉井コーチの「あれほど練習しない選手は初めて」といった裏の評判が徐々に伝わるようになった。

斉藤選手は決して練習をしない訳ではなく、自身が納得した練習内容でないと受け付けなかった。その練習のベースは大学時代にある。早稲田大学野球部時代、彼は一年生からエースであり、卒業するまで野球部の中心選手であった。

大学には彼以上の選手はいなかったし、彼に匹敵する実績をもったコーチもいなかった。だから彼はお山の大将であった。自分で考え、自分で納得した練習でないと受け入れず、また実績も十分残せた。だから、彼はプロ入りしても、その態度を改めることはなかった。

しかし所詮アマチュア野球である。プロ入りしてみると、現在の斉藤選手の力量は到底足りるものではなかった。しかし、高校から大学までエースであり、人気選手であり、中心選手出会ったが故に、その屈辱を受け入れる覚悟が足らなかった。

屈辱を糧に泥に塗れて、薄汚く、みっともない姿を人目に曝すことを厭う気質が、彼の成長を止めた。才能は間違いなくあった。しかし、才能を伸ばす努力を適切にやらなかった。あくまで自分が納得するといった制約下でのみ行われる努力である。

そして人は自らに甘いものだ。その結果が10年間でのプロ生活での15勝26敗である。その彼が引退して実業家を目指すという。

元々は節税目的で両親が創ったマネイジメント会社の社名変更であり、自立を目指しての社名変更だそうだ。堂々と代表の席についている。どうやら、この方、自分がお山の大将でなければ納得できないようだ。

普通は目指す業界の先輩を頼り、そこで下働きから始めて仕事を覚えるものですが、どうもお嫌みたい。もうプロ野球選手としての広告収入は期待できない状況で、今後どうするのか。私は少し意地悪な目で冷静に観ています。ヘンな輩に騙されなきゃいいのですけどね。
コメント (4)
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