ヌマンタの書斎

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クルドの悲劇

2019-10-18 11:52:00 | 社会・政治・一般

自らの国家を持たない民族は辛い。

国家とは、国民、領土、政府から構成される独立した存在である。当たり前のように思うかもしれないが、人類の歴史を振り返れば、形としての国家を持たない民族は珍しくない。

一番有名なのは、イスラエル建国前のユダヤ人であろう。もっとも彼らは古代にはユダヤ人国家を持っていたが、その後国家が消滅して以降、世界中に拡散していた後に再集結した珍しい事例である。

ジプシーとして知られるロマ民族や、フランスとスペイン国境で定住しているバスク人などが有名だ。最近だと旧ビルマ王国で異民族として扱われ、ミャンマーの軍事政権から迫害されているロヒンギャや、中東の地で複数の国家にまたがり棲息しているクルド人が国家を持たない民族として知られている。

また、かつては中央アジアに巨大な勢力を誇ったウィグル人や、アマゾンの奥地に追いやられた新大陸の原住民のような悲劇もある。いずれにせよ、国家を持てなかった民族は、総じて悲劇的な生き方を強いられる。

日本という国は、政府が国民を守ってくれることが当たり前すぎて、このような国家を持たない民族の悲劇に対する共感が乏しい。実際にクルドの人たちが日本に亡命を希望してきても門前払いしているくらいである。

実を言えば、クルド人は日本に数千人いると云われている。主に関東の蕨市や川口市にトルコ系の外人として暮らしている。トルコは親日的な国であるが故に、そのトルコ政府から目の敵にされているクルド人の受け入れには冷淡であるようだ。

クルド人はイラン西部からトルコ、シリアにまたがり暮らしていた遊牧民であるが、どの国からも迫害を受けているため、その正式な人数さえ分かっていない。海外に移住している者も多く、世界中で推定3千万人前後ではないかと言われている。これはかなり多い。

かつて十字軍を撃退したイスラムの英雄サラディーンはクルド人であったとされるが、現代でもクルド人は各地の外人部隊などで活躍している戦闘に長けた民族でもある。ただ、政治的な指導者に恵まれなかった。

これはウィグルもそうなのだが、遊牧民として長年暮らしてきた民族は、国境とか国籍のような制約を嫌がる傾向が強い。近代になり、世界中に国境線が引かれるようになっても、遊牧民はそれに従うことを良しとしてこなかった。

ある意味、欧州から生まれた近代という概念に最も敵対したのが遊牧民である。それゆえに、国籍を持たず、パスポートもなく、健康保険も年金もない。近代に縛られない自由と引き換えに、過酷な孤立を選択した、選択してしまった民族である。

それゆえに、現在非常に過酷な生き方を強いられているのがクルド人のような国家を持たない民族である。

日本では戦後、国家を否定し、国家を貶めることが平和に繋がると考える妙な人たちが、マスコミ、教育界、労働組合などにはびこっている。多くの日本人が、クルドやロヒンギャの悲劇に冷淡なのは、彼らの影響なのかと思うことがある。

台風関連のニュースにが多いのは致し方ないが、現在世界で話題になっているのは、クルド人やロヒンギャである事実も知って置いたほうが良いと思います。


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