ヌマンタの書斎

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ナベツネの死去

2024-12-24 09:23:59 | 社会・政治・一般

故人の悪口は言うな。それは日本の美徳だとは思うが、ある程度公人ならば、むしろ悪口を言う事も必要ではないか。

いや、悪口を言うのならば生きているうちに、本人の耳に届くよう言う方が良いといった考えも分かる。死後に悪口を言うなんて卑怯なのかもしれない。でも、私はけっこう鬱憤が溜まっているので、卑怯を承知で書いてしまう。

読売新聞の渡辺恒雄氏が亡くなった。毀誉褒貶の激しい人なのは確かだ。読売巨人軍のオーナーとして有名だが、前オーナーから譲り受けた当初は野球のことに全く疎かった。しかし、猛勉強して野球に詳しくなり、プロ野球の人気を支えた金満スポンサーでもあった。でも、最後まで野球ファンの気持ちは理解できなかったと思う。

彼にとって野球とは読売巨人軍がトップであるべきものであり、読売新聞や日本TVを使って大々的な巨人軍支援をしていたのは有名だ。ただ巨人軍ではダメで、読売巨人軍であるべきとの思いが強すぎて、その頑なさが私のような子供の頃からの巨人ファンの気持ちを理解できない人であった。

ナベツネ氏は本来は哲学好きな学生であり、どちらかといえば軍隊嫌い。だが志向的には右寄りであったが、それが前面に出てきたのは、やはり戦後の党人政治家の大物である大野伴睦の番記者であったからであろう。この自民党の大物政治家に気に入られたナベツネは、以降読売新聞社の出世街道を驀進する。

かつては社会部の読売と云われたが、ナベツネが政治部で活躍してからは社内の潮目が変わり、社会主義的傾向が抜けて右寄りの報道姿勢に変ったことこそナベツネの功績であろう。私はそれを彼の罪だとは云わない。むしろ立場を鮮明にした大新聞として会社を大きくさせたと思っている。

ただ独裁者とまでは言わないが、いわゆる家長的な感覚の強い人で、自分の意に添わぬことには喧嘩腰になりやすかった。その典型がJリーグ発足当初の読売ヴェルディに対する過剰な支援であり、川淵チェアマンが地域のチームを前面に出したことに反発し、川崎ヴェルディに納得できずに放棄したことは些かやり過ぎであったと思う。

それでも高校サッカー選手権への支援を日本TVが続けることは阻害しなかった。本人は決してスポーツ好きではないと思うが、政治的なセンスには長けていたように思う。ただし彼の矜持に触れなければ・・・であるが。

また中曽根・元首相の支援者として知られ、政治への関心も深かったが、右寄りと云われつつも軍人嫌いであり、靖国神社参拝にも反対だという妙な思考を持つ。でも保守としか言いようがない政治姿勢であったのも事実だ。

私はナベツネを独裁者だとは思わなかったが、戦前の家長の気風が強すぎる経営者だとは感じていた。そのせいだろうが、多くの優秀な社会部記者が退社している。それをナベツネの功績だとは云わないけれど、風通しの悪い会社にしてしまったとは思っている。

正直言えばこの方、長く権力の座に居座り過ぎた。しかもジャーナリストとしての優秀さでトップの座に就いた人ではない。与党自民党の大物政治家の後援あってこそトップの座に就けた人だ。読売新聞社はこの暴君の下でも大企業足りえた。

それはナベツネが管理者としてそれなりに有能であったことを証している。しかしインターネット時代への対応が大幅に遅れた。これを一個人のせいにするほど私は傲慢にはなれないが、経営のトップに遭った以上、その責任からは逃れられまい。

ついでだから書いておくと、現在の読売グループはナベツネのお気に入りで固められているはず。言い換えれば、ナベツネの横暴に抗し得なかった人たちである。既報のとおり新聞やTVはオールドメディアとして下降線を辿る一方である。立て直しは容易ではないと予測せざるを得ないですね。


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