
「山は逃げない」と言うが、そうだろうか。しかし、われわれの時間は逃げる。いろいろとやりくりをして山に来て、いつまた再訪がかなうかと思えば、やはり無理をする。海外の山などに行った場合ならなおさらだろう。そして運にも味方してもらい、都会では味わえない達成感、あるいは満足感を得る。だから、安全であることは大事だが、無理することも、一概には否定できない。またこの報酬は、身体を消耗させて得た結果ではあっても、心の消耗はそれほどとは思わない。
その一方、都会で味わう報酬は、仕事の内容にもよるが、心の消耗が大きい。例えば利害がからむ複雑な人間関係を調整し、うまく乗り越えた結果の満足感は、心の損耗を犠牲にした後味の悪い結果を伴うこともある。と言うか、そういうことが多い。
山で味わう満足感は、対象が自然であって人でないという違いが大きいだろう。肉体をいたぶることと、心を痛めることの二者択一は簡単ではないが、下界にあるような人との絡みのない世界で、一つの目標を達成できた喜びは、その対象がどうであれ後を引く。経済的には殆ど何のメリットもない無償という味付けが、逆にこの報酬をさらに光らせ、味わいを深め、満足感を高めることになる。
都会にも下界にも、そんな「山」がないとは言わないが、もしかすれば自然の中での方がむしろ手軽に、そんな「山」に出会えるのかも知れない。
ちょっと理屈っぽいことを書いたが、内容はたいしたことないなぁ。自嘲。
いよいよ台風が近付きつつあるようで、雨音も激しく、また霧も深くなってきた。今日は、早めに山を下りよう。
入笠牧場内の山小屋「農協ハウス」及びキャンプ場の営業に関しましては、4月26日のブログをご覧ください(日付をクリック)。