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ツツジの老木の根元、いつもの場所に、今年も「春咲くユキノシタ」の白い可憐な蕾を見付けた。今日あたりは風は強いが、日の光は春を思わせるような明度の高さを感ずる。もう、冬は終わったのだろうか。だとすれば短い冬だったが、さりとてそれを惜しむ人などもういまい。そうか冬は、使い古された外套のように捨てられ、忘られてしまう気の毒な季節だったのか。
やがて若葉が眠っていた谷を埋め、森を覆う。里に下りていた鳥や動物が野山に戻り、入笠にも活気漲る春の到来となる。そうなればもう、去っていった季節のことなど誰もが忘れてしまう。しかし、そうした自然の営みも、冬の間に降った雪が地中に沁み込み、ほとばしる清冽な流れとなって新しい季節を支えてくれる。老いた旅人が残していってくれた有難い、貴重な置き土産だ。
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いつのころからか、山室川に流れ込む栗立川との合流点近くに、写真のような案内板が立った。右折して山室川を渡ると、ここも普段は住人のいない集落がある。そのとっつきに「信州身延山」という、以前は盛んだったと聞く宗教施設があって、目印になる。前にも書いたが、法華道は諏訪神社口以外にこの赤坂口から登るコースもある。
多分Tさん夫婦が立てた道標だろう。ここからは高座岩には最短で行けるし、御所が池や、諏訪口から上がってきた法華道と合流することも可能だ。本家御所平経由で高座岩-北原新道-テイ沢-ヒルデエラ(大阿原)-入笠山-入笠牧場など、知られていない登山道を選択することもできる。
入笠の伊那側はまだまだ発展途上。このまま終わらせ、寂れさせては惜しい。まともな案内図もないようでは情けないから、今年は作ろう。
春の入笠牧場は山桜、ズミ(小梨)、クリンソウ、そして新緑と残雪の山。汗をかいてお出で下さい。