昨夜は雨の音を聞きながら眠った。早朝に目覚め、カーテンの間から外を覗くと、周囲はすっかり霧に閉ざされていて、気温も低そうだった。
二度寝をして起きてみると初冬の青空が拡がり、午前9時の段階で気温は10度を超えていた。確か、今週あたりから冷え込むような話だったと昨日、迷いを重ねてきた水回りも冬支度をすべて済ませ、取水場以外の水の流れを完全に止めたというのに、まるで出端を挫かれたようなものだ。
週末に2泊3日の予定でやってきた男ばかりの3人組らは、半ズボン、半袖のR君以下誰も寒いという言葉を口にしなかったし、そればかりか、小屋に泊まった、こっちは男1名に女3名の4人組は、ここの気温が思いがけなかったようで、「暖かい」を連発していた。
いよいよ明日、ここでの暮らしを終えて牧を閉じ、山を去る。きょうと明日は、小屋の荷物の片付けが精一杯で、他には手が回らないかも知れないが、できれば山道の整備を完了してない北原新道と御所平峠には行っておきたい。
テイ沢には昨日行ってきたし、牧場の各牧区の入り口は施錠した。後は、時折近くまで訪れる猟師や猟犬、その銃声や咆哮におののくことがあっても、牧場内は立ち入り禁止で猟場ではないから、雪が降るまでの間は鹿の天国になってしまうだろう。
猟期が始まったというのに、山は静かだ。いや、猟師だけでなく、富士見のゴンドラが点検整備のため1か月ほど営業が休止となり、それに先日呟いた通り伊那側も、千代田湖から枯れ木の頭までがすでに通行止めとなっている。一般の人たちにとっても、これまで以上に入笠へ来るのが不便になった。しかしそれが、この時季の本来の山の味わいを深めることにもなる。
と、そんなことを呟いていたら、ガス回りの最終点検のため、いつも世話になっているNさんが忙しい合間を縫ってきてくれたようだ。車の音がする。まだ詳しいことを呟くのは先になるが、氏の厚意をどこまで生かせるかと、少し複雑な思いで受け止めた。
テイ沢から来たのだろう、クマよけの鈴の音を響かせながら2名の登山者が通り過ぎていく。天気も良く、冬へと向かう静かな山の気をあの人たちは存分に味わえたことだろう。
まだ、雪が降って車で来られなくなるまでは、時折は見回りに来なければならないし、今年も越年は法華道を歩いて登ってもここでする。
本日はこの辺で。