入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’23年「夏」(27)

2023年07月06日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 よく眠った。途中2,3度目が覚めたが、12時間ぐらいは夢さえ見ずに爆睡一途に眠りこけた。足腰に痛みは残るが、お蔭で疲労感は霧散したようだ。
 昇り始めた太陽の鋭い光を浴びながら、いつもの通り1杯の茶(コーヒー)を飲む。飲むでなく「喫す」と気取りたいような、いい気分の朝だ。
 野鳥たちの交歓の季節も終わったのか、先程から聞こえていた鳥の声はホトトギスだけだったが、その声もいつの間にか消えて、青い空がさらに拡がってきた。

 昨日は、北原新道の刈り残した3分の1ほどの草刈りをした。普段は腰にペンチ、ハンマーをぶら下げていても、この急な山道に関しては別で、午前中は刈り払い機(草刈り機)のみ、午後はそれに熊手(ゴミ掻き)を加えただけで、とにかく身軽にして刈ることのみに集中した。
 そうでないと、歩いてたった10分程度のこの山道の整備は始めたらきりがなく、いつになっても終わらない。牧守の仕事があり、一日中専念しているわけではないがすでに5日目、丸太1本、大ハンマー、シノ、番線、ツルハシ、ノコギリなども投入してきた。それでも、残念ながら思うだけのことができずにいる。

 高座岩周辺も、実生から生えた落葉松が大分大きくなり、その他の灌木もあって、あそこからの眺め、岩を取り巻く全体の景観をかなり悪くしている。だからといってあそこは山室の遠照寺の飛び地であり、どこまでの範囲になるかは知らないが、国有林同様に勝手なことはできない。
 先日法華道を歩いた時に高座岩まで住職も足を運んでいるから、恐らくそのことにも気が付いているだろう。秋にでもなったら、動員の声がかかるかも知れない。

 昨日は、今にも雨が降り出しそうな天気で、谷の向こうの山々には絶えず霧が流れていた。時折その合間に見せる落葉松の葉の色は、最近の退屈な緑色とは違って、霧が刷毛の役目をしたのだろう、幾度も塗り重ねられたその深い、柔らかな緑の色に、この春、長野市まで行って見たあの日本画家の絵を思い出し、重ねながら眺めていた。

 本日はこの辺で。本年度の営業案内については下線部をクリックしてご覧ください。


 
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     ’23年「夏」(26)

2023年07月04日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 雨の日が続いた幾日かの間に、遠くの山々の残雪も大分消えてしまった。今は梅雨の季節、貴重な晴天がそのことを気付かせてくれた。
 ここの谷間もすっかり単調な緑一色に埋もれ、春先から眺めてきた自然の繊細多様な色彩の変化を視るのは、夏が過ぎるのを待つ。

 たまには恥ずかしながら妄言を。
 富士山の弾丸登山は控える、河川での水遊びでのライフジャケットの着用せよ、はたまた登山時のヘルメットを被れ等々、痛ましい事故を防ぐためにこうした対策は何程かの役には立つかも知れない。
 しかし、仄聞するあの劣悪な山小屋の状況では安眠など望むべくもないだろうし、ライフジャケットを身に付けての川遊びで果たして泳げるようになるのか、落石、転倒を怖れて汗をかきかきあの暑苦しい物を頭に被る必要がどれほどあるのか。
 
 そんな安全ばかりを言って、高速道路の走行車線のみを時速80㌔以下で走り続けるような行動ばかり求めては、自然の醍醐味、豪快さを本当に知ることができるのか、と思う。
 生命は元より尊い。だから、であるからこそ、危険を察知し、対峙する勇気も時には求められる。山ひとつを例にしても、岩登り、雪中登山、氷瀑登攀、酸素の希薄な高山の登山、これらには転落、雪崩、凍傷、酸欠、高山病、避けえないかも知れない危険がたくさん潜んどいる。しかし、だから止める、というわけには行かない。

 テレビに出演して物申す人たちは、とにかく正しそうなことを言わんとする。人格者ぶって、品よく、過激を避けて。論理性、一貫性があるかどうかは知らないが、とにかく言葉を選んで平和、平等、安全、などについて語る。
 けれど、安全運転について講義してくれる警察官が、自動車レースについては語れないのと同じような気がする。もちろん、神経にヤスリをかけるような登攀など知らないし、体験しようともしない。
 そういう人たちが世論の一部以上を形成していくのだろう。それで身過ぎ世過ぎとしているのだから、LGBTQなどについても本心などは晒しっこない。
 
 反抗ばかりを繰り返す課員を叱責したら「パワハラ上司」と呼ばれ、女子社員の身に着けていた服を褒めただけでも、相手が嫌いなら、それを「セクハラ」と言うらしい。言うことを聞かない生徒を小突けば「暴力教師」にされて、どうも性格の良くない者ばかりが過剰に保護される窮屈な世になったものだ。
 相思相愛ならいいけれど、片思いの相手からは「気持ちが悪い」と片付けられては立つ瀬がない。これは言葉の暴力ではないのか。失恋だって、人生の良薬ともなりうるという救いもあるかも知れないのに、気の弱い男女は恋愛すら諦めるのかと案じてしまう。
 
 昨日、TDS君とM君とテイ沢を歩いていてクマを見た。クマの活動領域は広いから、いまごろ「クマ出没危険」などという注意書きを出しても「安全」には役立たないだろう。

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 本日はこの辺で。
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     ’23年「夏」(25)

2023年07月03日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

 
 先週の土曜日、富士山が山開きしたらしい。天気はあまり良くなかったようだが、多くの登山者が出掛けたと報じていた。
「弾丸登山」などと言って、途中の小屋で1泊せず、一気に登る登山はよろしくないということから、山小屋は大変混雑したらしい。誰がこんなことを言い出したのか知らないが、これについてもいろいろな考えや意見がある。年齢、体力、経験、いろいろと条件は違うから、一概には決めつけられないだろう。
 みんなが行くところへは行って見たい、しかしそのくせ、自分だけしか知らない場所へも行って見たい、という気持ちもあるのだから厄介だ。

 囲いの中の乳牛たちの居場所が、国有林の際のフェンス寄りに移動した。あの辺りは比較的平坦で、捕獲された鹿の場合も同じようにあの場所に身を隠そうとすることが多い。
 この部屋から眺めるその景色は窓枠や電柱、電線などが邪魔をして、写真で撮るには不向きでも、人間の目はそういう不要な物を意識しないよう都合よくできている。だから、眺める分にはこの場所が一番だと思っている。
 
 大分牧草があの牛たちの体内に消化され少なくなってきた。いや、まだ量的にははそれなりにあるのだが、生意気にもあいつらは、あまり生育した草は食べないし、柔らかい穂先しか食べない。
 明るくなれば草を食み、暗くなるまで食べ続ける。その間にああやって草の上に横になる反芻の時間はあるが、あれも休憩と言うよりか、食べることと同じく仕事だろう。そうでなければ身を保つことはできず、死ぬしかない。
 そういう家畜の不憫な運命がこの「長閑」な眺めの中にはある。きょうも鳴き声が朝から絶えない、あのカラスどもの方がまだマシだろうか。

 青空が拡がってきた。気温は体感とは違い22度もある。草刈りの仕事が待っている。

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 本日はこの辺で。
 



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     ’23年「夏」(24)

2023年07月01日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など



 霧が降りてきた。まるで煙のように薄い。それが時に南から、あるいは北から行き交い、やがてこの谷を少しづつ乳白色の一色に変えていくようだ。囲いの中にいた牛の姿も、もう見ることができない。そういえば、今朝は鳥の声もしない。

 昨日の雨はひどかった。牛たちは望みもしないシャワーを終日浴び続け、さすがにどうすることもできないまま悄然としていた。あの牛たちの大半は人間ならばまだ子供、いや幼児である。
 入牧してから早くも半月が経つ。そろそろもっと広い隣の第2牧区に移すことを考えなければならないが、そうなればそうなったで、牛たちには高電圧の電気牧柵の洗礼が待っている。

 小降りになった雨の中、第1牧区にいる和牛の様子も見にいった。ところが塩くれ場から御所平を回り、さらに引き返して雷電様に行ってみても牛の姿がない。
 残るはこの牧区で一番低い場所にある「舞台」とか「ドン底」などと呼ぶ牛たちの好む放牧地で、川が流れ、森もあれば湿地帯もある。
 ただ、かなり急な斜面を下っていくことになるから、雨に濡れた草地は頼りの軽トラでも上り返すことができるか不安だった。できなければ、歩いて帰るしかない。
 牛たちはいた。ただし4頭だけで、追い上げ坂に残留した1群だった。1頭はこちらに気付き下りてきたが他には無視され、この雨も人間の仕業と誤解して腹を立てているような態度に、見えた。
 案の定、帰りはタイヤが滑って上り切れず、車を反転させ、1速よりも登攀力のある後進によってかろうじて難を逃れることができた。

 再び御所平に戻り、牛の集団脱柵を案じつつ、そこにもある森だか林の中を
丹念に見て回った。そしてモミの大木の下で成す術もなく、呆然自失した哀れな牛たちをようやく発見した。

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 本日はこの辺で。明日は沈黙します。
 
 
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