「はい、わたしはここ人間界に住まわせていただきました。このご縁を限りなくよろこんでおりました」
*
これは過去形だから、このわたしはすでにここには居ない。ここには居ないがどこかには居て過去を追想しているようだ。ともかく次へ出立しているが、そこからも人間界がときどき話題に上っていて、そういう時には目にもあざやかにそこに見えることがあるらしい。そこがここだと思えるくらいに間近に。
*
そういう述懐を、さて、今のわたしは、その先で、つまり死後になって、することがあるだろうか。それよりなによりそのご縁を、今現在に限りなく喜んでいるのだろうか。喜んでいいことなのである。喜んでいいことを喜ぶことは、しかし、なかなかに難しいので、いつもは逸(そ)らしてばかりなのだ。
*
限りなく喜ぶには、それをそうする条件整備が整ってこなければならぬ。その条件整備とは、皮肉にもそうすることができなくなってきた時、病む時、老いる時、死がすぐそこに迫ってきている時になって、いよいよ確かに整備される。極めて逆説的臭いが、普段は喜べないのだ。平穏無事な時には喜べないのだ。
*
人間界に住まわせてもらっているご縁は、今日ただいまのご縁である。限りなくこれを喜ぶのもその希少な、そして頗る貴重なご縁としたいところだ。
*
それをよろこべないか
鳴いている百舌鳥
それをよろこべないか
黄金のアキノキリンソウ
それをよろこべないか
朝ご飯を食べた
*
これは過去形だから、このわたしはすでにここには居ない。ここには居ないがどこかには居て過去を追想しているようだ。ともかく次へ出立しているが、そこからも人間界がときどき話題に上っていて、そういう時には目にもあざやかにそこに見えることがあるらしい。そこがここだと思えるくらいに間近に。
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そういう述懐を、さて、今のわたしは、その先で、つまり死後になって、することがあるだろうか。それよりなによりそのご縁を、今現在に限りなく喜んでいるのだろうか。喜んでいいことなのである。喜んでいいことを喜ぶことは、しかし、なかなかに難しいので、いつもは逸(そ)らしてばかりなのだ。
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限りなく喜ぶには、それをそうする条件整備が整ってこなければならぬ。その条件整備とは、皮肉にもそうすることができなくなってきた時、病む時、老いる時、死がすぐそこに迫ってきている時になって、いよいよ確かに整備される。極めて逆説的臭いが、普段は喜べないのだ。平穏無事な時には喜べないのだ。
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人間界に住まわせてもらっているご縁は、今日ただいまのご縁である。限りなくこれを喜ぶのもその希少な、そして頗る貴重なご縁としたいところだ。
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それをよろこべないか
鳴いている百舌鳥
それをよろこべないか
黄金のアキノキリンソウ
それをよろこべないか
朝ご飯を食べた