明暗。暗がなければ明がない。明がなければ暗がない。単独と言うことはない。互が互を立てるためにある。互を成立させるために互を必要としている。つまり一対ということである。片方を切り捨てるというわけにはいかない。互いが互いの背景になっている。明は暗を背景にしているし、暗は明を背景にしている。こうやって互いを生かすのである。
生死の生もそうである。死によってはじめて生が誕生する。死を持たない生は根無し草である。根のない花は水を吸えないで干涸らびる。生を持たない死もしかりである。死だけでは死ねない。必ず生を控えている。両者は表裏一体である。単独と言うことはない。こうして互いを生かすので在る。恐れることはない。無有恐怖(むうくふ)の世界である。われわれはいつも無有恐怖の世界にいるのである。