サンパウロからイグアスまでバスで往復を試みた。古希を過ぎて馬鹿みたいだが片道15時間の夜行である。日本語の話せる現地のおばさんと知り合った。彼女は日本人男性と結婚し、滋賀に住んで4年になる。今回は姉を訪問するため戻ってきたのだ。イグアス到着は早朝7時、誘われるまま迎えに出ていたお姉さんの車に同乗し、お姉さんの家でシャワーを浴び朝食までご馳走になった。その後2日間に及び車でイグアスの滝や他の自然公園、博物館、発電所など案内してもらった。お姉さんは小学校の先生、担当のクラスを同僚に頼み、案内してくれたのだから感謝の言葉もない。初対面の人に親切にする行為は国際人として学びたい。共稼ぎで家は質素だが庭もありお手伝いさんも使っていた。翌日案内された世界最大のイタイープ・ダム発電所はイグアス河にかかる世界最大の発電所だ。生憎の雨でダム湖そのものは霞んでよく見えなかったが、貯水量2000億立方メートル、巨大な電力量を誇る。パラグアイと共同で作られたこの発電所から国内サンパウロの距離まで電力を供給されている。
イグアスの滝のブラジル側はエレベーターを降りたところが一番壮観だ。目の前で膨れ上がり轟音と共に落下する水の束と飛沫、爆風、それに虹も映ってなるほど評判通りであることを実感した。そこから木の歩道橋を歩いて行くと上下二層に分かれた滝やワイドに広がった数個の滝、眼下に落下する巨大な滝などがある。初めに見た雄大な滝と他のすべての滝の爆音が重複し、共鳴し、反響し、さながら音の多重奏だ。飛沫で周囲が霞み、この光景はナイアガラの比ではない。筆者の訪問時は水量が完璧だった。多過ぎると爆風で水煙化して霞んでしまい、広がった滝が見え難く轟音のみとなる。ボート・ツアーは客を喜ばせようとアルゼンチン側の滝の真下まで行く。飛沫で身体中がびしょ濡れになる。大きくボートが揺れ、奇声とも歓声ともつかぬ乗客の声が響く。(続く)(自悠人)