鳩山首相の言葉の軽さは既に指摘されている通りですが、沖縄でのお言葉はその頂点を示すものでしょう。政治の劣化がいわれて久しいですが、ここに極まれりの観があります。あちこちに紹介されているので気が引けますが、引用します。
「私は、海兵隊が必ずしも抑止力として沖縄に存在しなければならない理由にはならないと思っていた。ただ、学ぶにつけ、沖縄に存在する米軍全体の中で海兵隊は、抑止力が維持できるという思いに至った。(認識が)浅かったと言われればその通りかもしれない」 (首相は責任の生じない「思い」という言葉がお好きのようです)。
胸中を吐露された正直さはわかりますが、これでは安全保障の初歩的知識もないままに、首相が重要な決定をしていたことを暴露したことになります。同時に、判断を助ける有効な仕組みもなかったことが露呈したわけで、政府としての機能不全を意味します。
子供手当や高速道路無料化など様々なバラマキを約束しておられますが、こんな調子では「学ぶにつけ、実現は不可能だという思いに至りました」ということになりはしませぬか。
米政府の要人は「鳩山政権は政府の体をなしていない」と言ったそうですが、まことにごもっともというほかありません。鳩山政権は国民多数の支持を得て成立した政権であるだけに、一国民として少し恥ずかしいという「思い」に至りました。
マスコミは政権を批判するだけでなく、選挙という民主的な制度がなぜこのような政権を生んでしまったか、ということにもっと注目してもよいと思います。放置すれば繰り返される可能性があり、「再発防止」を考える意味があると思います。
鳩山政権を生んだ要素はいろいろあるでしょうが、テレビと小選挙区制が大きな役割を果たしたのではないかと考えられます。ニュースはその解説によって受け止め方が大きく変わります。ニュースが娯楽のネタとして扱われるニュースショーは大きい影響力を持っていますが、白と黒、正と邪というようにわかりやすく単純化される傾向があります。
例えば後期高齢者の医療問題や福祉予算2200億円削減問題では本来の目的である財政支出の膨張を抑制するという意味はほとんど報道されず、不利益ばかりが強調されました。福祉予算2200億円削減は毎年の自然増加分約1兆円を2割程度抑制するということなのに、予算そのものを減額するような印象を与えた報道がありました。
最近ようやくマスコミは財政問題に関心を持ち始めましたが、当時はほとんど関心を持たなかったようで、とても残念なことです。財政に対する無理解が民主党マニフェストの非現実性を、それが絵に描いた餅だということを指摘できなかった理由でありましょう。
小泉政権時代の郵政選挙や昨年の総選挙では世論が一方に大きく振れましたが、これはマスコミの横並び体質とニュースショーの影響なしには考えられないと思われます。この影響力は個々の立候補者ではなく、第一義的には政党の人気に対して働くことに注意したいと思います。
一方、小選挙区制は投票の差を拡大し、世論の振れをいっそう大きくして一方に圧倒的な勝利を与えました。小選挙区制は不安定化要因となります。また小選挙区制では党の公認が死命を制するほどの意味をもつので、政党の影響力が強くなります。
昨年の選挙では政治家としての資質や能力が未知の小沢チルドレンが大量に当選する一方、政治家としての実績がある自民党の議員が多数落選しました。これは議員の資質や能力があまり重要な要素ではなくなったことを象徴する出来事です。党に忠実なだけの凡庸な政治家が大量に生まれる危険があり、政治の劣化を加速するでしょう。
以上、思いつくままに書きました。仮説とまでも言えない代物ですが、政治の「不作」が続くのはたいへん不幸なことであり、選挙制度などの政治制度、テレビなどメディァのあり方などに関する議論が行われてもよいと思った次第です。
参考拙文 テレビ民主主義
「私は、海兵隊が必ずしも抑止力として沖縄に存在しなければならない理由にはならないと思っていた。ただ、学ぶにつけ、沖縄に存在する米軍全体の中で海兵隊は、抑止力が維持できるという思いに至った。(認識が)浅かったと言われればその通りかもしれない」 (首相は責任の生じない「思い」という言葉がお好きのようです)。
胸中を吐露された正直さはわかりますが、これでは安全保障の初歩的知識もないままに、首相が重要な決定をしていたことを暴露したことになります。同時に、判断を助ける有効な仕組みもなかったことが露呈したわけで、政府としての機能不全を意味します。
子供手当や高速道路無料化など様々なバラマキを約束しておられますが、こんな調子では「学ぶにつけ、実現は不可能だという思いに至りました」ということになりはしませぬか。
米政府の要人は「鳩山政権は政府の体をなしていない」と言ったそうですが、まことにごもっともというほかありません。鳩山政権は国民多数の支持を得て成立した政権であるだけに、一国民として少し恥ずかしいという「思い」に至りました。
マスコミは政権を批判するだけでなく、選挙という民主的な制度がなぜこのような政権を生んでしまったか、ということにもっと注目してもよいと思います。放置すれば繰り返される可能性があり、「再発防止」を考える意味があると思います。
鳩山政権を生んだ要素はいろいろあるでしょうが、テレビと小選挙区制が大きな役割を果たしたのではないかと考えられます。ニュースはその解説によって受け止め方が大きく変わります。ニュースが娯楽のネタとして扱われるニュースショーは大きい影響力を持っていますが、白と黒、正と邪というようにわかりやすく単純化される傾向があります。
例えば後期高齢者の医療問題や福祉予算2200億円削減問題では本来の目的である財政支出の膨張を抑制するという意味はほとんど報道されず、不利益ばかりが強調されました。福祉予算2200億円削減は毎年の自然増加分約1兆円を2割程度抑制するということなのに、予算そのものを減額するような印象を与えた報道がありました。
最近ようやくマスコミは財政問題に関心を持ち始めましたが、当時はほとんど関心を持たなかったようで、とても残念なことです。財政に対する無理解が民主党マニフェストの非現実性を、それが絵に描いた餅だということを指摘できなかった理由でありましょう。
小泉政権時代の郵政選挙や昨年の総選挙では世論が一方に大きく振れましたが、これはマスコミの横並び体質とニュースショーの影響なしには考えられないと思われます。この影響力は個々の立候補者ではなく、第一義的には政党の人気に対して働くことに注意したいと思います。
一方、小選挙区制は投票の差を拡大し、世論の振れをいっそう大きくして一方に圧倒的な勝利を与えました。小選挙区制は不安定化要因となります。また小選挙区制では党の公認が死命を制するほどの意味をもつので、政党の影響力が強くなります。
昨年の選挙では政治家としての資質や能力が未知の小沢チルドレンが大量に当選する一方、政治家としての実績がある自民党の議員が多数落選しました。これは議員の資質や能力があまり重要な要素ではなくなったことを象徴する出来事です。党に忠実なだけの凡庸な政治家が大量に生まれる危険があり、政治の劣化を加速するでしょう。
以上、思いつくままに書きました。仮説とまでも言えない代物ですが、政治の「不作」が続くのはたいへん不幸なことであり、選挙制度などの政治制度、テレビなどメディァのあり方などに関する議論が行われてもよいと思った次第です。
参考拙文 テレビ民主主義
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