噛みつき評論 ブログ版

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東芝危機に見る発想の硬直化

2017-04-30 23:52:19 | マスメディア
 東芝は米子会社で発生した巨額の損失のために危機を迎えているようです。2年続けて債務超過になれば上場廃止になると騒がれています。そのため、稼ぎ頭の半導体部門を別会社にし、それを売却することによって利益を出して債務超過を回避する計画であると報道されています。買収側が提示した価格は2兆円とか3兆円と言われています。

 素人ながら疑問に思うのは、2兆円か3兆円もの時価価値の資産があるならば売却しなくても時価に見合うよう再評価するだけで資産が増えて債務超過を回避できるのではないか、ということです。現在はそれが会計上の理由などでできないらしいですが、売却したとたんにその資産が何倍にも増加するというのは不合理です。

 きっかけは米子会社の損失を減損処理したことですが、これは資産価値を再評価して評価を下げることです。ならば同様に半導体子会社の資産価値を上げるように見直すことがなぜできないのか、不可解です。複数の買収提示価格という客観的な時価があるにもかかわらず、です。両者には正負の違いがあるだけで同じ意味の操作です。

 企業のオーナーが死亡した時、相続における株の評価価格は一般に額面ではなく時価で算定されます。つまり課税時には時価評価して、より高額の税を徴収できる仕組みです。この場合、時価評価は現実に行われているわけであり、合理性もあります。

 東芝の半導体子会社の売却は国益を損なうリスクもあるとされ、将来にわたって東芝が保有するのが最善だと思われます。子会社を任意に時価評価することが形式上無理ならば、規則や解釈を変えれば済むことではないのでしょうか。そりゃいろいろと不都合なこともあるかもしれませんが、憲法9条の下で自衛隊を持つ苦労に比べれば、大したことはないでしょう。

 私が無知なためかもしれませんが、東芝問題を会計の枠組みの変更で解決するという議論があってもよいのではないでしょうか。形式を重視し、実質を軽視する思考のためか、あるいは従来の枠組みの中だけで考えるクセがつき、枠組みそのものを問題としない頭の硬直化のためでしょうか。

 このような傾向は既存の枠組みの中で過ごした期間が長いほど、また脳が柔軟性を失うほど顕著になると、一般化してもよいでしょう。例えば、これは環境がどんなに変わろうとも憲法という枠組みを頑として変えたくない人たちにも適用できるかもしれません。蛇足になりますが、9条の会の呼びかけ人9名の内すでに半数以上が故人であることは当初からこの会が頑なな高齢者(最年少者が1935年生まれの大江健三郎氏)で結成されたことを示し、この推論を裏付けているとも考えられます。

戦争危機の過少報道

2017-04-17 00:22:24 | マスメディア
 米国と北朝鮮の間で緊張が高まって、一触即発の危機にあるとも言われています。双方の代表であるトランプ大統領と金正恩第一書記、いずれも何をするかわからない人物であることが危機を予測困難にしています。戦争が起きる確率など計算しようがないというわけです。確率が不明であるが、その結果が極めて重大であるとき、できる限りの準備をするのが当然です。

 M8以上の南海トラフ大地震が起きる確率は今後30年以内に60~70%、今後10年以内に20%程度とされています。つまり大雑把に言うと、ここ10年間は1年あたり2%程度の確率と考えてよいでしょう。それでも地震への準備は進められています。98%起きなくても、起きた時の重大さを考えれば2%でも準備するのが当然です。

 北朝鮮はやがて米国を核攻撃する手段を持つようになるとされています。米国はそれまでにその脅威を取り除く意志がある筈です。中国からの圧力が成功しなかった場合、単独での軍事攻撃に踏み切る可能性が低いとは言えないでしょう。先延ばしは北朝鮮の攻撃能力を高め、米国だけでなく韓国や日本の安全をさらに脅かします。

 一方、米国が主導する政権が北朝鮮にできるのを嫌って中国が先に北朝鮮を攻撃する可能性もないとは言えないと思います。中国が北京-平壌間の国際定期便の一時停止したり、北朝鮮との国境に中国軍が終結しているとの報道もあります。今後どうなるか、予測は全く困難です。

 つまり日本が戦争に巻き込まれる可能性は無視できるほど低いとはとても言えないわけです。しかし一部を除けば、多くのメディアは戦争の可能性をあまり伝えていません。とくに左派メディアはその傾向が強いと感じます。この時期にスケート選手の引退報道を2日間トップニュースで報道した姿勢は理解に苦しみます。朝日・毎日は北朝鮮関連のニュースをあまり載せず、多く載せている産経と対照的です。

 護憲を主張するメディアは憲法前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」を金科玉条のごとく扱ってきました。日本を攻撃する諸国民の不公正と不正義などあってはならないのではないでしょう。こんな国が存在すれば憲法前文や9条の存在が危うくなります。自衛隊の予算拡大に反対することも困難になります。

 このような体質は攻撃される危機を出来るだけ小さく見せようという傾向を生じます。しかし攻撃の可能性がないという根拠もなく、また攻撃を受ける確率が計算不可能である以上、注意を喚起すべきなのは当然です。意図的に危機を過少に報道することは国民に対する重大な背信行為であり、国民を必要以上に危険にさらすことになります。国民の安全より党派的な主張を優先するバカげた行為です。

 危機を報じてそれが杞憂に終わったとしても、適切に伝えずに危機を拡大してしまうよりはマシです。北朝鮮のミサイルに備えて避難訓練をしているのは私の知る限り秋田県男鹿市だけです。株価も日本が戦争の影響を受けるという地政学リスクが織り込まれて影響を受けているようです。漫然と報道を見ているだけでは戦争の危機などほとんど感じられません。これが実態を正確に反映したものであればいいのですが。

時代錯誤

2017-04-02 23:59:53 | マスメディア
 3月20日、時代錯誤が疑われる人、森友学園の籠池氏は自宅に野党4党を招待されました。首を並べて参加されたのは共産党:小池晃、民進党:今井雅人、社民党:福島瑞穂、自由党:森裕子の各氏だそうです。いずれも各党の幹部で、力の入れようがわかります。

 教育勅語を教えるような右翼の学園主宰者に共産党や社民党が「応援」に行くのはなんとも不思議な光景です。招待する方もされる方も、節操なきことこの上なし、です。まあそんなことよりもお互いに現実の利益と党利が何よりも大切なのでしょうけれど。

 ところで国会は政策を議論する場だと思いますが、その機能を籠池問題に費す野党の目的は果たして何なのでしょうか。安倍政権を倒して野党政権を樹立するのが最終の目標だと思いますが、小池晃政権や福島瑞穂政権、蓮舫政権などを期待する国民がどれだけいるのでしょうか。鳩山政権で散々な目に遭っているわけで、期待するのは北朝鮮と中国くらいではないでしょうか。

 国会の場で政府の疑惑を追及するのはかまいませんが、野党がしつこくやりすぎては国会の本来の機能を奪ってしまいます。この問題は国会の機能を独占するほど重要なものではないにもかかわらず、とくに左派メディアが大きく報道しています。それは安倍政権の足を引っ張る効果があるからでしょう。その大報道を重要問題だと野党が勘違いして、しつこくやりすぎればればやがて野党は国民から嫌われてしまうことでしょう。

 ところで、安倍昭恵氏から100万円の寄付を受領したという籠池氏の発言を朝日はその真偽も確かめず、朝刊の一面トップに載せました。その一方、それを否定した安倍氏側の発表は夕刊最下部のベタ記事でした。この扱いのひどい差によって印象は大きく影響されます。どちらが嘘をついているかわからない段階でこんな扱いはないでしょう。右翼の籠池氏側に立つのも野党と同じです。これが「不偏不党の地に立って…」と綱領に謳う朝日の真の姿でしょうか。

 以前から現在まで朝日など左翼メディアは野党と同様、自民党政権の打倒を目標にしてきた観があります。しかし国民の大多数は蓮舫政権や小池晃政権を望んでいないと思われます。それは低迷する政党支持率を見れば明白です。左翼メディアにしろ野党にしろ自民党政権を倒すという目標は見えるのですが、そのあとのビジョンが私にはどうも見えてきません。

 現実的な将来ビジョンを提示し、それを実現する政策を示すという政党本来の機能が明確でありません。だからなんでも反対の野党と揶揄されるのでしょう。民主党政権は、政府批判だけに安住してきた野党が左派メディアの協力によって偶然政権を得たものであり、その失敗は必然的だと言えます。初めから政権を運用する能力備えていなかったわけです。なんでも反対の野党と左派メディアが共存するという「ビジネスモデル」は過去のものになりつつあるようです。この旧秩序にしがみつくのもまた時代錯誤と言えるでしょう。